2016年のプロ野球開幕がスタートした。1936年に日本職業野球連盟、現在の日本野球機構(NPB)が結成されて今年で80周年を迎える。80周年の節目にふさわしいシーズンになって欲しい。

さて、そんな中、タイガースには高山・横田という新しい顔ぶれにヘイグ・マテオという新外国人が戦力に加わった。昨年のシーズン終了後に呉 昇桓とマートンが抜け この穴をどう埋めるかが、今シーズンの課題ではあったが どうやら 穴を埋める以上の戦力になりそうだ。


高山の事は よく知っている。実は大学の1年生の頃から 時々 バッティング指導をしていた。春・夏の大学のキャンプでは ずいぶん バットも振らせた。であるから 高山の能力は 良くも悪くも 知っている。ゆえに 彼が打席に入ると気が気ではない。今は 評論家の皆さんからもファンからも、そして首脳陣からも好評価なのでホッとしているが いずれ 悪いところも顔を出すので その時は 温かい目で見守って欲しい。


横田の脚力も魅力である。また、マテオのスライダーには 日本の打者は苦労するだろう。ヘイグを含めた新戦力は タイガースのスローガンでもある「超 変革」にふさわしい戦力となるだろう。今シーズンが楽しみである。


今シーズンのタイガースは 積極的な走塁をテーマとして 失敗を恐れず 一つでも前の塁を狙う事がチームの方針である。これはこれで素晴らしい事である。これに 何の異論もない。


ただ、「暴走」と「好走塁」は 紙一重だと言う人がいる。要は「暴走」もセーフになれば、結果次第では「好走塁」になるではないかという理論だ。私はこの理論には いささか 抵抗があるのだ。


ここで 走塁の基本的な考えを論じたい。まず、走塁には状況判断が非常に大切であるということ。イニング・アウトカウント・点差・次打者などの状況が走塁を左右する。


例えば、相手の送球がストライクで、アウトになるタイミングでは自重する場合と万が一送球が逸れればセーフになる事を想定して行く場合がある。また、タイミングが五分五分の場合でも行く場合と行かない場合がある。これらは すべて 状況が左右する。


開幕3連戦のうちの3つのシーンを検証してみよう。


まず、25日の試合、5回裏 0死 1・3塁の場面、メッセンジャーのサードゴロを中日の高橋がセカンドに送球。それを見た3塁ランナーの西岡がホームへ突っ込み 2対2の同点に追いついたシーン。


次に26日の試合、6回裏 先頭打者の高山がサードゴロを打ち それを中日の高橋が大きく逸らし 高山が2塁まで進んだシーン。


最後に、同じイニング、0死 1・3塁 で ヘイグのレフトフライの時、1塁ランナーの横田がタッチアップをしたが 2塁ベースでタッチアウトになったシーン。


西岡のケースでは セカンドのベースカバーに入った中日の荒木が1塁へ送球してしまい得点となったが、荒木がきっちり西岡のスタートを見ていたらホームへ送球し 西岡はタッチアウトになり 0死 1・3が 1点も入らず 2死 1塁になっていたであろう。


高山の場合もレフトの藤井がストライクの送球をしていたらアウトであった。


横田の場合は 次打者が4番、5番と続く場面である。


誤解の無いように言えば 彼らはチームの方針に従いアウトを怖がらず積極的な走塁をしていたわけで彼らを批判しているわけではない。


くどいようだが あくまで一般的な走塁の基本を論じているだけである。基本的な考えで言えば、これらは次打者やアウトカウントを考えれば 自重する場面なのである。


西岡の場合は 走るなら ゴロを打った瞬間にスタートし 自分が三・本間に挟まれ 挟殺プレーをしてる間に 打者走者を2塁まで走らせ、1死 2・3塁の形を作るのが基本である。


高山の場合は まだ ノーアウトである事や 自分の脚力、そして次打者の横田を考えれば 無理にセカンドへ行く場面ではない。6-2とリードしている場面、 つまり、点差が4点あったので 勝っているチームとしては 無理をする場面ではないのだ。


また、横田の場合は アウトのタイミングでセカンドへ行かなくても「盗塁」という作戦もあるし、4番の福留がヒットを打てば 1・3塁という場面も作れるわけで 自重すべき場面であった、というのが走塁の基本的な考えである。


この基本的な考えから チームがどのように変化するかは 指揮官の考え次第である。私は ただ、セーフになれば「好走塁」を連発している人達に 一言、言わずにはおれなかったという事である。


いずれにしても足を使ったスピーディーな試合はファンを魅了する。今年のタイガースは 本当に楽しみである。