「負け」に良い負けも、悪い負けも無い。負けは負け。
ただ、負けには 必ず 原因がある。それは 準備の怠り、気持ちの緩み、そして 単純な技術ミスだったりする事が多い。
時には 相手の力が上回り 実力の差で負ける時もあるが 昨日の試合の敗因は 完全な配球ミスだ。
しかし、ひとえに失敗と言っても知っているのにもかかわらず犯す失敗と 知らなくて犯す失敗がある。つまり、キチンと指導されていたのにもかかわらず出来なかった事と何も教えてもらっていなかったので出来なかった事では まったく 違う話なのだ。
9回表、たった2球で同点にされた原因が バッテリーの不用意な配球だった事は間違いない。代打・高橋の初球のストレート、代走・鈴木を置き、3番・橋本への初球のストレートは あまりにも慎重さを欠き不用意だったと批判されても仕方がない。
では、どうすれば良かったのか、「転ばぬ先の杖」というかそれを事前に防ぐ為に 指導する役割の人がいると思う。
試合前には 必ず バッテリー・ミーティングがあり、1番打者から8番打者まで その打者の長所や短所、調子の有無を先乗りのスコアラーから報告され 相手投手の打力やここ一番で出でくる代打、ゲームが均衡している時の作戦など詳しく話される。
そして、バッテリーコーチや投手コーチが そこに 何かを付け加え、最後に監督が自分の考えを言ってミーティングが終わる。
ジャイアンツの高橋は もう 何年も戦っている選手なので 超積極型な打者である事は 誰でも 知ってる事だ。勝負が早い。
ただ、そんな事、本人も知っている事で 自分の攻め方は百も承知、最近は 変化球を意識するばかり ストレートに遅れ気味だった。
17日の代打も ファースト・ファールフライで高宮に抑えられたが 打ち取ったスライダーは紙一重だった。そんな高橋の入り方は 先頭打者という事もあり より慎重に入らなくてはならない、とアドバイスする人間がいるハズである。
打たれた後に とやかく言うのは我々 解説者の仕事だ。9回の守りに行く梅野に どんなアドバイスを首脳陣は送ったのだろう。ここが問題である。
結果論でモノを言うのは簡単である。片岡のエラーで喜ぶベンチの中に梅野にアドバイスする姿は見えなかった。もしかしたら、片岡に代打・高橋が送られる事と予想できなかったのかもしれない。
「由伸の入り方が単純すぎた」と試合後、指揮官のコメントがあるが まだ 2年生の梅野に 何が簡単で何から入るのが慎重なのか、指導して欲しいものだ。
そもそも、昨日の最大のミスは 高橋への初球ではなく、橋本への初球だ。あの場面、代走・鈴木の盗塁もあれば、バントもある。エンドランだってあるし、普通に打ってくるかもしれない。つまり、何をやってくるか分からない時に 簡単にストレートでストライクを取りにいった事が最大の敗因である。
あの場面は、ボールから入り「様子を見る」という事をしなくてはならない場面だった。入団 1・2年目の古田敦也が よく野村克也さんに怒られていた。「分からない時は様子を見ろ! ボールから入るんだ」と。
ボール球から入るという事は 打者が有利なカウントになってしまう。特に 「ここぞ」という場面では 捕手としては 喉から手が出るくらい欲しいストライクだ。
しかし、1ボールになってしまっても その1球から得られる情報がいっぱいあるのだ。打者やランナーの動作から 得られる情報がたくさんあり、敵の出方を見極める上で 1つのボール球が大きな役割を果たす。
昨日のあの場面、「ボール球から入れ」と指示があったら 違う結果になっていたに違いない。
皆さんは 捕手が1球1球、ベンチを見る姿をテレビや球場で見たことがあると思う。あれは ベンチからの指示を確認しているのだ。
何も無い時もあるし、ウエストや牽制の指示もある。バントシフトの指示や、もちろん、ボール球から入れ、の指示もある。高橋の初球だって、橋本への初球だって ベンチから指示を出そうと思えば出せたのだ。
つまり、昨日の敗因はベンチの指示ミスだ。梅野のリードワークに批判が集中しているが そもそも論で言えば指導力不足である。
知らないことは教えられないし、また、知らないことは出来ない。そんな事を考えさせられる試合だった。
勝てた試合だったのに、ゴメスの本塁打でチームが波に乗れたのに、ジャイアンツに勝ち越せたのに、甲子園に足を運んでくれた大勢のタイガースファンを喜ばすことが出来たのに 返す返す残念である。
21日からは 6連敗中のベイスターズ戦である。連敗を脱出して、はしゃいで喜ぶ敵将の姿は見たくない。
昔から 横浜スタジアムでは それまで沈黙していたタイガースの打線が繋がりだしたり不調だった選手も 急に打ち始めることがある。相性良い球場で 是非 良い流れと勢いを付けて欲しいと願っている。