やっと、開幕を迎えた。2月1日にキャンプインしてから  3月27日の開幕まで54日間を長く感じるのは私だけではないだろう。何はともあれ、開幕した。

緊張感が漂う雰囲気の中、プロ野球を見るのも乙なものだ。高校野球も良いが 、プロ野球には また 違った良さがある。昨日は 昼に高校野球を見ている間も 私の心の中ではカウントダウンが始まっていた。「あと4時間で開幕」「あと3時間で」………。17時を過ぎたあたりで 私まで緊張してしまった。

神様が 一つだけ 願いを聞いてくれるというなら もう一度 プロ野球選手に戻りたい。今度はヘマはしない。しみじみと思ってしまう。

さて、昨夜の試合、8回に追いつき10回にサヨナラゲームとなった。球団初の開幕サヨナラ勝ちだそうだが 開幕戦のサヨナラ勝ちが球団初と聞いて 2度ビックリした。

「えっ、今まで 無かったのか。」

聞くと、サヨナラ負けは 6回もあるらしいが 勝ったのは初めてと聞いて ビックリしたものの、 まっ、タイガースらしくも思えた。

初回、1点を先制され その裏 先頭打者の鳥谷がセンター前にヒットを打ち出塁した。先制を許し 沈みがちのベンチの雰囲気を一変させたと思う。

上本の初球がボールとなり ここで ベンチはヒットエンドランを選択した。ドラゴンズの先発の山井が不安定の間に撹乱してやろうという意図だろう。この考えに とやかく言う事はない。ヒットエンドランというサインが出た時、選手が考える事は、まず、「 ゴロを打つ」こと。次に「センターラインを外す」こと。

これは 投手ゴロになったり 二遊間の選手がゴロを捕球してベースを踏んで1塁に送球すれば、せっかく、ゴロを転がしてもダブルプレーになってしまう事を防ぐ為だ。

できれば、2塁ベースに入る選手を狙えれば 1・3塁になる確率が高くなる。あらかじめ、二遊間は ランナーが走った場合、どちらがベースカバーに入るかを決めている。

昨夜のケースなら 二塁手の荒木が入る事になっていたと思う。まっ、こんな事を選手は サインが出た時に考え、相手投手の球種と球威を考え準備するのだ。

一方、ヒットエンドランを出す側の作戦決行の絶対的な条件は投球が「ストライク」である事だ。だいたい、ヒットエンドランを出すカウントは 打者有利カウントか 初球も含めた平行カウントだ。投手有利カウントでは ヒットエンドランのサインは出さない。ヒットエンドランのサインを出していなければ 必然と 初球なら 1ボールになり、1-0なら 2-0 となり また、2-1なら 3-1となり 俄然 打者有利になる。つまり、ボール球の時にヒットエンドランのサインを出す事は 相手を助けることになり 相手投手を立ち直らす事にもなりかねない。

昨夜のケースで 上本の2球目は カーブが高めに抜ける完全なボール球だった。上本は 飛びついて それをなんとか バットに当てる事が出来たが  ファールにするのがやっとだった。ベンチがヒットエンドランのサインを出していなければ あんなボール球に手を出す事はなく2-0というカウントになっていたハズだ。

野球は 1球で 状況が変わるスポーツだ。あの1球が 状況を変えたのか、それとも まったく 影響しなかったのかは 想像の域を超えない。ただ、ヒットエンドランこそ、指揮官のセンスが問われる作戦なのだ。

私の恩師、野村克也氏は「私は 1・3塁にしたいから ヒットエンドランのサインを出すんだ。1死 2塁の形にしたいならば 私は バントのサインを出す。だから、ヒットを打つ努力をしてくれ。仮に投球がボール球なら 出した監督の責任だ。」と常々 言っていた。そして、完全なボール球なら 打者は振らなくても良い事になっていた。野村監督のヒットエンドランを出すタイミングは絶妙だった。次の投球がストライクかボールなのかなんて 「勘」しかない。その勝負勘こそが リーダーのセンスだと思う。12球団見渡して その勝負勘があるリーダーが野球界に何人いるのか心細い。

データを重視したり、高い確率のものを選択する事は ある程度の経験があれば容易にできる。しかし、「勝負勘」となると 誰にでも備わっているものでもない。今シーズンは 監督同士の勝負勘がモノを言う勝負を 数多く 見せて欲しい。

監督だって人間だ。間違いや失敗はあるだろう。それを許す許容範囲はある。良い試合を見せてくれればくれる程、許容範囲は広がるだろう。

今シーズン、たくさんの人達に 感動や勇気、元気や明日への活力を与えるタイガースであって欲しいと願うばかりだ。