まずは 初のファイナルステージ進出を評価したい。相手、広島カープの打線の調子が悪く機能しなかった事も幸いだったが 投手陣は よく頑張った。

メッセンジャーも能見も、呉昇桓も 本当に よくやった。それにしても2試合を行い、 両チームで 1得点しか入らないという珍しいシリーズだった。

それに加え、同点のまま12回裏の攻撃がない、という特殊なルールで あの様に妙な終わり方は 初めて見る光景だった。 あんなにハンディをつけて 短期決戦をする意味があるのか、疑問が残る。

疑問はそれだけではない。今回は 12日に試合が出来たが 仮に 12・13日と雨で試合が中止になれば 14日しか試合が出来ず その場合、タイガースが11日に勝利していれば 12・13日の雨天中止の時点でカープの敗戦とタイガースのファイナルステージ進出が決まるという、変則なルールが採用されていて、その不自然さにはただただ驚かされる。

誰が考えたのか分からないが これはさすがに改善の余地はある。いずれにしても、最後に失速してしまった広島カープが気の毒に見える。

昨日の試合でも 野村監督の勝負師ぶりが 遺憾なく発揮された。勝負には 勝ちと負けがある訳で 一か八かの勝負もあるだろう。野村監督らしい采配だった。

その一方で タイガースは 実に 点を取るのがヘタである。5回裏、先頭の福留が出塁した場面だが、1ストライクから鶴岡にヒットエンドランのサインを出した。

まず、ヒットエンドランという攻撃の基本は 打者は 最低でもバットにボールを当てなければならない。その上で、ゴロを転がしヒットを打ち 1・3塁の形になれば最高である。従って、プロ野球に置けるヒットエンドランという作戦は 1・3塁の形にする為に どうしたら良いか考えるものである。

2塁ベースに入る野手の逆をつけばヒットになる確率が高くなるので 自分が打席に入り 1塁走者が盗塁した時、セカンドベースに入る野手は2塁手なのか遊撃手なのか事前に知っておく必要がある。

私がヤクルト時代には 野村克也監督から その事は 懇々と教えられた。その為に 事前に1塁走者に盗塁をする格好をしてもらい、どちらが入るのかを確認したものだ。そしてその時には ヒットエンドランのサインが出なくても いつか ヒットエンドランのサインが出た時に使う為に ノートへ書き込んでおいたものだ。

よく偽装スタートと言うが、この場合はバッテリーにプレッシャーを与える為のものではなく 2塁ベースカバーにどちらが入るのか、確かめる為のものなのだ。相手バッテリーにプレッシャーをかける、というのはアマチュアの世界で だいたい そんなことでプレッシャーを受けるバッテリーはプロでは通用しない。

これが 選手が最低限やらなくてはならない事だ。では、ベンチがやらなくてはならない事は何かというとそれはヒットエンドランのサインを出す時は 最低限、ストライクである、という事である。

如何にプロと言えどもとんでもないボール球を容易にヒットに出来る訳がない。野村克也監督は 「もし、とんでもないボール球の場合は ベンチの責任、俺の責任だ。だから、バットを振らなくてもいい。しかし、少々 ボール球の時は 俺を助けてくれ」と我々 選手に言っていた。

ところが、和田監督がヒットエンドランのサインを出す時は ことごとくボール球が多い。しかも、「これはゴロも転がせないわ」というボール球である。鶴岡の時も 気の毒で あれでは カウントを不利にしただけである。

これは ひとえに考え方が間違っているからである。彼は バントの代わりにヒットエンドランを使っている。ヒットエンドランとは、1塁ランナーを2塁へ進塁させる為ではなく 1・3塁の形にする為の作戦なのだ。

ダブルプレーを怖がってヒットエンドランのサインを出すのではない。まっ、今に始まった事ではないが クライマックスシリーズという舞台で改めて見せられるとガッカリである。

昨日のオリックス対日本ハム戦みたいな試合を期待していたのだが 「やっぱり」の試合内容だった。15日から始まる日本シリーズが思い遣られるが 今の流れでいうと もしかしたら もしかするかもしれない。

なんと言ったって 今のタイガースは投手力がある。その中でも先発陣が安定している。「下剋上」なんて言葉は使いたくないが 15日から始まる日本シリーズを楽しみにしている。