よく「原点に帰れ」という言葉を耳にする。しかし、原点って 何を指すのだろう と思う事がある。

原点とかセオリーなんて 人それぞれ違うし 技術的なものか、野球に対する姿勢なのか よく分からない時が多い。

また、セオリー=基本 と誤解している人が多いが、 セオリーとは 理論とか理屈、手法という意味で 基本という意味ではない。

さらに言うと、「基本に忠実に」 なんて言う人も多いが それも 何を指すのか漠然としててよく分からない。

バッティングに関しても 基本と言われるものは複数 存在し ピッチングに関しても またしかりである。

例えば イチローが基本通りにバッティングをしているとしたら 少年野球の子供達は イチローを模範とし、そのフォームを真似れば良いと言う事になってしまう。しかし、実際に イチローのフォームを真似ても 打てるようになる打者は少ないだろう。何故なら 真似て良い所と真似てはダメな所が存在するからだ。

つまり、イチローの打撃フォームの中には 基本もあるが 基本ではない所も多く存在するのだ。私は その事を明確に 説明している野球の本や解説者の話を聞いた事がない。

よくよく 突きつめて行くと 野球に関しては 原点だとか 基本だとか いう事は たいがい 漠然としてて明文化されていない。明文化されていないのに よく使われるという不思議さがある。

「基本通り、センター返し」なんて声を大にして話すアナウンサーもいるが インコースのシュート系もアウトコースのスライダー系も センターに返す事が 基本だとは思わない。

センターへ打つ意識は 大切な時もあるが あくまで「意識」の話で 基礎とか基本というのは 無形の物ではなく有形な物のハズだ。

特に 最近では 「強い気持ち」「諦めない気持ち」など メンタルを強調する人も多いが では「強い気持ち」とか「諦めない気持ち」を 誰が 教えるのであろう。

プロの世界では 何コーチが担当する事なのか、よくわからない。だいたい、「強い気持ちだ」「諦めない気持ちが大切だ」なんて 声を大にして指導すれば それが身につくものなのか?

まして、「気迫」とか「意地」などはいつ、誰が 教えるものなのか? そもそも、プロ野球関係者に メンタル面を指導する為のカリキュラムを受けた人間がいるだろうか。

技術練習やフィジカルトレーニングは 嫌ってほどしてきたが メンタルを指導する教育は受けていない。

確かに アマチュア時代に「規律」の指導を受けた記憶はあるが、あれがメンタルの指導も兼ねていた、と言われれば兼ねていたのかもしれない。

コーチングとティーチング、とても、難しい問題なのだ。選手にとっても 良い指導者に 巡り会うか、が 非常に重要である。しかし、選手には その事を運命に任せる他はなく その結果 たくさんの悲劇を生み出してきた事も事実である。

イチローや金本のように 自分を自分で指導できる人間は少数だ。大多数のアスリートには 正しいアドバイザーが必要である。

そんな事を 思いながら 藤浪と清水の若いバッテリーを見ていた。サインの出し方やテンポ、キャッチング、リズムや間の長さ、配球に至るまで改善する事が たくさんあり過ぎて 彼らが この先 どのように成長して行くのか、非常に心配になった。

経験の無さを 何でカバーするのか、戸惑ってる姿が 孤立無援のバッテリーに見えた。審判員も 個々で ストライクゾーンが違う。

藤浪の修正能力の高さは分かっているが 少し 心配になってきた。清水を含めて 的確なアドバイスが必要である事を痛感した試合だった。