2013年2月の初旬、タイガースの沖縄キャンプを見学に行った際に、ちょうど 一カ所バッティングをやっていて、岩本が登板したのだがその時の投球は見事だった。

何といってもコントロールが素晴らしかった。アウトコース・インコースに ストレートや変化球をことごとく決めていた。

初めて間近で見た私は その制球力の素晴らしさに驚いた。こんなに制球力のある投手は 1軍の投手でも なかなか いない。即座に将来性を感じた。

ただ、課題があるとすれば 「球威」だった。ストレートの球速が140キロを越える事は少なく あと4~5キロ増せば 将来のエース候補だと感じた。そういうこともあり、岩本の事は いつも 気にしていた。

ところが、その後、聞こえてくる評価が良くない。オープン戦でも、 シーズンに入ってからも調子は上がらなかった。

5月の2軍戦で岩本の投げる試合を見たのだが 私が見た沖縄キャンプとでは 大きくかけ離れていた。あの素晴らしかったコントロールが 良くない。岩本にとって生命線である制球力が良くないのだ。

不思議に思い ファームを中心に取材しているマスコミに逆取材したのだが 彼らが言うには ピッチングコーチと上手くいっていないというのだ。どちらが悪くて上手くいっていないのかは 分からないし、それが 直接の原因かどうかも分からない。

そもそもマスコミの人間が言う事も正しいとは限らない。ただ、そこは 私だけではなくファンの皆さんも心配する「育成」という部分なので 非常に心配していた。

それから 時間が経って、昨夜、岩本のピッチングを見たのだが やはり 制球力がなかった。本来、岩本の制球力は天下一品である。これでは 並の投手だ。このままでは 岩本は1軍での活躍は出来ない。

人間には 必ず 長所と短所がある。野球選手にも長所と短所がある。長所を伸ばし、短所を克服するのが練習だが どうしても短所の方が目立ってしまう。ここで指導者は どうしても短所の克服の方を重視する。その結果長所が消えてしまう事がある。

昨年まで在籍していたブラゼルが良い例だ。ボール球を振る事を強調して修正すると長所の長打力を失う。つまり、短所の克服の方法を誤れば 長所をも失ってしまうのだ。

岩本には まだまだ チャンスがあるだろう。順風満帆な人生なんてあり得ない。この挫折を忘れる事なく精進して欲しい。

さて、あっという間に 7・5ゲーム差になってしまった。そりゃ、勝てるゲームを落とせば こうなるだろう。

今日から巨人との3連戦。数字上は明日にもマジックが出るそうだが あくまで数字上だ。ここで ズルズルと後退していけば、今年もタイガースファンの期待を裏切る事になる。

もちろん、このあとクライマックス・シリーズがあるが 私が声を大にして言いたいのは 今 頑張らないで いつ 頑張るんだ、という事だ。

心技体という言葉があるが 時に野球に必要なのは「知力」である。戦略・戦術、又は 選手の適材適所を見極める能力、配球を読んだり、狙い球を外したり、そういった「知力」が野球には必要である。

プロが頑張るという事は、心技体というベースに「知力」を加えて全力で戦う事を指す。タイガース、頑張れ!!