「さすが能見」というピッチングだった。

昨日の能見は、オリックス戦から比べれば ぜんぜん、良くなかった。しかし、悪い時は悪いなりの投球が出来るあたりが、「さすが」と思わせるところだ。

オリックス戦でキレていたフォークボールが なかなか決まらず勝負球をチェンジアップに切り替えていた。

また、ストレートもオリックス戦と比べればイマイチだったのだが要所要所を低くコーナーに決めていた。

円熟味を増した感じだった。「悪いなりの投球をする」 なんて簡単に言うが そんなに簡単ではない。

悪いなりの投球が出来る投手は日本球界を見渡しても少数だ。能見は、その少数に入る。能見が投げる日は安心してゲームが見れる。

ロッテの成瀬も能見も、スピードガンでは そんなに速い計測は出ていない。

成瀬は 140㌔に達する事はなく、能見も140㌔を越えないストレートが多数ある。しかし、打者は差し込まれる。

まもなく、夏の甲子園の予選が始まるが 今の高校生は140㌔を越えるストレートを投げる投手は ごまんといる。しかし、成瀬や能見のストレートと明らかに違いがある。

スピードを計る計測器は、バックネット付近に設置され そこから電磁波が出て行き 投手の投げたボールに当たりその跳ね返ってくるスピードを計算して表記するらしい。

本当は真後ろから測定するのが正確なのだが捕手や主審が居るので、斜め後ろになっている。その為、甲子園では左投手の方が計測が速くなるという。

つまり、正確には成瀬や能見は、もう少し球速が遅くなるのだ。

ますます、不思議な話になる。150㌔の速球を投げても抑えられない投手もいれば、140㌔に満たない速球でもリーグを代表する投手がいる。

2003年、タイガースに伊良部が入団してきた。そこに下柳が入団し、よく三人で ご飯を食べにいった。

伊良部と下柳がピッチングの話を よくしていたのだが、私は聞き役で、熱く話す二人の話を聞いていた。その時、いつも伊良部が私に「先輩、ピッチャーは前足が地面に着いても投げちゃダメなんですよ。これは、私が 金田正一から教わった事でルーキーの時代から今まで大事にしている事なんですよ」と、呑むたびに何度も何度も聞かされた。

私は、良い投手を見ると いつも 伊良部の話を思い出す。ダルビッシュや前田(広島)、金子(オリックス)や能見、成瀬や田中(楽天)は、やっぱり、横を向いている時間がながい。

つまり、前足が着いても投げていない。今となっては、遺訓となってしまったが 伊良部に投手の大切な事を教えてもらった。本当に 感謝している。

さて、今日は藤浪が登板する。伊良部が言ってた「前足が地面に着いても投げない」を思いながら試合を観戦したい。