昨日の能見のピッチングは本当に素晴らしかった。完璧だった。コントロール、変化球の切れ、配球、全てが完璧だった。

あんなに良い能見を見るのは記憶にない。ここ数年は エースとして彼が中心のローテーションを組み、安定した成績を残していた。

その中でもとりわけ昨日の投球は群を抜いていた。コントロールが抜群で特にフォークボールが切れていた。

彼のフォークボールに対応出来ないオリックスの打者を見ていて横浜の佐々木や野茂英雄が頭の中に浮かんで来た。言わずもしれた伝説のフォークボールを投げた投手達だ。

フォークボールとは正確には無回転のボールになるのだが実際は多少、縦回転をする。

投手や投手出身のコーチは フォークボールに最大限の落差を求めて、無回転のボールに近づける練習をしたりアドバイスをする。

春季キャンプなどでブルペンに見学に行くと 仕切りに 「今のは落ちた」「この球は使えない」など1球1球、確認しながら投げる光景を見る。

私は現役時代、佐々木のフォークボール対策を随分したのだがヤクルト在籍時も巨人在籍時も結局明確な答えは出なかった。

当時の打撃コーチが「ボール球に手を出すな」「フォークかストレート、どちらかを決めて打って行け」、とアドバイスするぐらいだから いつも 佐々木に抑えられていた。

何しろ落ちる。いや、落ちると言うより消えると表現した方が的確かもしれない。

消えるもんだからストライク・ボールの判断も出来ず ワンバウンドになるフォークにも手が出てしまった。

お互いが引退して 何度かゴルフに行ったり呑みに行ったりする仲になり 当時のフォークボールについて質問した事があった。

色々、質問した。握り方から投げるテクニック、打者との間合い。その中でひとつ、「落ちるように見せる」という答えがあり、すごく気になったので 真相を聞いてみると無回転のボールだと打者がボール球に手を出してくれないので縦回転を入れる、と言うのだ。

プロの打者の動体視力は飛び抜けているので、無回転のボールは判断しやすい。だから、縦回転を入れ、その飛び抜けている動体視力を逆手に取ってボール球を振らせる、と言うのだ。

もちろん、縦回転を入れ過ぎると落ちないので微妙なテクニックがいるらしい。

聞いていて唖然とした。
確かに、思い当たる事があった。

現在の野球界ではフォークボールに変わりチェンジアップが流行している。

チェンジアップとは 打者が投手の投げた球をストレートと勘違いをして振ってしまうモノだが まさしく、佐々木の投げたフォークボールはストレートと勘違いをして振ってしまうのだ。だから、打者の視界から消えるのだ。

能見のフォークボールが佐々木のフォークボールの域に近づいている。タイプは違うが 打者がストレートと勘違いをして振ってしまう特長は同じだ。

昨日のオリックス打線の反応はついつい佐々木の話を思い出させるフォークボールだった。

秋には、クライマックスがあり日本シリーズがある。それを考えた時、能見の存在は大きいし、たくましく思える。

あとは「無事これ名馬」という言葉があるが ケガだけはしてくれるなと心から願っている。
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