久保のクローザーについて、反響が大きかったのでコメントします。

近年のプロ野球ではクローザーになる過程としてセットアッパーからの配置転換が自然の流れである。藤川球児にしかり、岩瀬にしかり、である。

だから、クローザーを選出するならセットアッパーから選ぶのが妥当である。それ以外の選択肢としては、トレードやFA、海の向こうから戦力を補強するという選択であろう。

そもそも長年、先発として調整してきた人間を即クローザーへコンバートするのはなかなか難かしい。確かに昔は先発投手からクローザーへの配置転換はあった。しかし、昔と今では先発と抑えの調整方法は全く違うのだ。

現在、プロ野球の先発ローテーションは中6日である。 つまり、週に一度しか登板しない。時々、中5日で登板する事はあるが、外国人選手以外はほとんどが週に一度、月に4、5度の登板機会しかないのだ。

そんな週一度の登板調整をしてきた人間がすぐに連投なんて出来るハズがないのである。

しかも、久保はもう33歳だ。だから私は久保を一人前のクローザーにするには時間が掛かるし辛抱もいると言っている。

ここでいう辛抱とは28日の試合みたいにひっくり返される事を如何に辛抱できるか、ということだ。したがってこの「辛抱」とは「覚悟」なのだ。指揮官にそれだけの度胸があるか、が問われるのだ。

もちろん、辛抱をしたからといって久保が一人前のクローザーになれる保証などない。全ては自分の眼力を信じられるか、なのだ。久保をクローザーに指名した人間が自分自身の眼力を信じられるか 、ただ、それだけだ。

言うまでもなく、久保をクローザーに指名したのは和田監督である。和田監督は久保にクローザーとしての適材能力があると判断した責任において辛抱するしかない。その結果、オフに非難の中、辞任するのか、それとも賞賛されるのかがはっきりするのだ。

クローザーを誰にするのか、という判断はそれほどに大きな決断になる。これほど重い決断だからこそ自分自身の進退もかかる。昨オフ、どれだけの思いで久保を指名したのかが問われるのだ。

久保の次回の登板がいつになるのかは分からない。が、次回の登板はファンのどよめきの中の登板になると思う。「ピッチャー、久保」のアナウンスがあった瞬間、 球場内は声援とも罵声とも取れる声が球場全体に響き渡るのだと思う。
考えてもみて欲しい。
そんな雰囲気の中で久保は登板するのだ。いつもは背中を押してくれるファンの声援がその日は、まったく違うものになるだろう。味わった事のない人には理解出来ないと思うが、それは凄まじい嫌悪に満ちた独特な雰囲気だ。

そんな中で結果を出すという事は相当な精神力とエネルギーがいる。桧山のように温かい声援の中でプレーするのとは大違いだ。

もちろん、ファンを味方に出来なかった本人の責任も大きい。プロである以上、結果を出せなかったのだからヤジられるのは仕方がない。

しかし、結果を出す前に罵声や非難を浴びるのはとても辛いことだ。それが阪神に入った者の宿命と言ってしまえばそれまでだが、久保にはその雰囲気に呑まれず頑張って欲しい。

阪神ファンの特徴として罵声やヤジが、いつの間にか温かい声援に変わるというのも早いということがある。あとは久保に罵声やヤジを温かい声援に変えてもらえる様、その姿を温かく見守りたい。