皆さん、たくさんのコメントありがとうございます。
藤浪君のシュート回転は直るものなのか、そもそもどうしてシュート回転してしまうのか、更にはそれは修正しなくてはならないものなのか?などのご質問をいただきました。

今は、だいぶ直りましたが、初登板の時はずいぶんシュートしていました。その時は一体なぜ、シュートしていたのかをご説明しておきましょう。

物事には 現象と原因があります。例えば、腹痛はどうでしょうか。腹痛の現象は当然のことながら、腹が痛いのですが、原因に関してはいろいろ考えられます。風邪かもしれないし、腫瘍があるのかもしれないし、筋肉痛かもしれない。原因を究明しなければ対策も施せません。

では、藤浪のストレートがシュートしてしまう現象の原因は何なのか?これには二つの原因が考えられます。

まずは骨格によるものかもしれないということです。人間、誰しも多かれ少なかれ人差し指と中指の長さは違います。197㌢という長身から考えてもそうとう腕も長い。そういった要素が彼のボールをシュートさせてしまう原因なら修正する必要はありません。それはいわゆる、クセ球です。

ただし、考えられるもう一つの原因、フォームのメカニズムに何か問題があり、それが原因でシュートさせてしまうのなら修正しなくてはなりせん。

つまり藤浪のボールをシュートさせてしまう原因が彼の身体からくるものなのか、フォームの問題からくるものなのか、原因を明確にする必要があるということです。

私の見解では、後者だと思います。
では、いつ、修正するの?
「今でしょう!」では、ありません。
私は原因がそうであっても今すぐに、やらなくてもいいと思っています。

シュートしてしまう事でいく度か失敗を重ね、本人がシュートしてはダメだ、と自覚してからで充分です。

シュートする事で失敗しないうちは修正する必要はありません。むしろ、その間はシュートしてしまう事を利用すべきです。選手はシーズンが終わってから、自分には何が足りてて、何が足らないのか振り返る時が来ます。良い選手ほど自分自身がステップアップする為にいろいろ、考えるのです。その時に藤浪自信が答えを出すはずです。我々はただそれを見守りましょう。

では、フォームのメカニズムが原因でなぜシュートしてしまうか?これをもう少し詳細に分析すると、いくつかの原因があるのですが、その一つに「手首が寝る」という原因が有ります。
今日はそれを皆さんに説明します。

ひとまず、皆さん、ダンディ坂野の「ゲッツ!」を思い出してみてください。

あの、「ゲッツ!」をやりきった後の手首の角度、あれが手首が寝ている状態です。あの状態でボールをリリースするとボールはシュート回転してしまうのです。 投手がボールを離すところをリリースポイントというのですが そのリリースポイントで手首が「ゲッツ」をした状態になる事を 手首が寝るといいます。

これを直すにはダンディが「ゲッツ!」を言う前の状態、手首が立った状態でリリース出来ればボールはシュート回転しなくなるでしょう。

ここでずいぶん、昔の話になりますが巨人の斉藤雅樹の話をしましょう。

彼は1982年ドラフト1位で巨人軍に入団しました。85年に12勝したのですがその後は鳴かず飛ばずで 2軍でプレーする事も多く、1・2軍を行ったり来たりで、だいぶ苦労していました。試行錯誤の末、リリースポイントも下げました。

ある時、伸び悩んでいる斎藤に当時、日本ハムで活躍していた柴田保光投手から「斎藤、上から投げようが、サイドスローで投げようが リリースの時は手首が立ってないとダメなんだ。斎藤、お前は 手首が寝ているぞ」とアドバイスを受けたのです。

その後の斎藤は押しも押されもせぬジャイアンツのエースになったのです。斎藤はサイドスローにもかかわらず ストレートがスライドします。昔、よく言った「まっスラ」です。そのスライドしたストレートが左打者の内角を鋭くえぐり ことごとく詰まらせました。今で言うと「カットボール」です。

斎藤はこのボールを意識して投げたのではなく、自然と投げていたのです。手首を立てるというアドバイスを忠実に実行しただけのことなのです。

これとは反対に手首が寝てしまえばシュートしてしまうのは当然の事です。しかし、たかだか 手首を立てるか、寝てしまうか、などという事が 大投手をも 1、2軍を行ったり来たりしてさせてしまう、という事なのです。

どうです? 野球って、本当に奥が深いでしょう。