タイガースの自力でのクライマックスシリーズ進出への可能性が復活した。

タイガースの残り試合は、43試合。
勝率5割を3位ラインとすれば、30勝13敗で乗りきらなければならない。
現実的には、かなり高いハードルだと思う。
しかし、可能性がないわけではない。
ただ、奇跡的だ。

ここで問題となるのは、残り試合の位置付けである。すなわち、あくまでクライマックスシリーズ進出を最優先にするのか、或いは 来期以降への布石に重心を移すか である。

現時点でタイガース首脳陣から聞こえてくるメッセージである
「1戦1戦を大事に最後まで諦めない」
等から推測するに、きっと前者なんだと思う。

先日、ブラゼルと坂が一軍に昇格し、代わりに伊藤隼太とザラテが二軍に降格した。
そこからもタイガース首脳陣の意志がクライマックスシリーズ進出である事が伺える。

ただ、これは ややもすると単に問題を先送りしただけ という結果に終わる可能性がある。

私は、クライマックスシリーズに進出するにはブラゼルの復活が絶対条件である、と思っている。
その考えに立てば、ブラゼル昇格は当然の判断だが、来期以降の戦力の底上げを念頭に考えれば、疑問が残る。
また、坂が良いとか悪いではないが、一軍に昇格する選手のタイプが同質化している事も、“組織における人材の多様化”の観点から疑問が残る。
結局、俊介が試合に出れば大和が先発から外れる。
もし、坂が先発すれば、俊介か上本が先発から外れる事になる。
坂を代打で使うと今成と重なる。
何故、このような人事になるのか不思議である。


「勝ちながら育てる」

これは理想的だが、現実的には なかなか難しい。

タイガースの首脳陣や ひいてはフロントも含めて、今、考えなければならないのは、「勝つ」と「育てる」のどちらを優先すべきか、という事であって、目先の感情論ではない。

そもそも、何故、このような順位になったか、原因は何か、を検証するべきである。
その反省に基づき、チーム改革をするべきだ。
そして、目標は、巨人・中日に勝てるチーム作り、である。

勿論、チーム力を巨人・中日レベルまで引き上げるのは簡単ではない。
最低でも、2~3年はかかるだろう。
それ程、中期的な視点が必要なチーム状態だという事だ。
問題は山積している。
しかし、その前に、問題を問題だと認識しなくてはならない。
その作業は、内部の人間だけでは出来ない。
ファンを含め、広く意見を求めチーム改革をして欲しい。

対症療法ではなく、根本的な施策を行う必要があると思う。





(野球評論家)
広澤克実