野球の試合においては、
「ミスした方が負け」
という事をよく耳にするが、昨日の試合に関しては、
「強い方が勝った」
という一言に尽きる。

点差こそ1点であるが、両チームには点差以上の開きがあった。

昨日で、自力優勝の可能性が消滅した。

7月8日に、自力優勝が消滅したのだ。
たぶん、又、自力優勝は復活すると思うが、7月の初旬で自力優勝が消えてしまう事にチーム事情の深刻さが表れている。


しかし、今のタイガースを最低でも Aクラス、願わくば再建まで果たす事を、チームをここまでの状態にした現在の首脳陣に求めるのは、酷かもしれない。

ただ、仮に、どんな名監督が来ても、ここまで、悪くしてしまったチームをどうやって再建の道筋をつけるのか、見当がつかないのだが…。

そう思わざるを得ない程、チーム状態は 悪い。

このようなチーム状態で、この時期を迎えた場合に、耳にするフレーズがある。
「来期に備えて、若手を積極的に起用する」

である。

勿論、間違ってはいない。ただ、この場合は前提として、
「今は結果が出なくても、将来に期待する」
という事だろう。

それは、裏を返せば 将来 期待するに足るだけの結果を残す能力があると認められて、初めて成立する話である。

更に言えば、映画で言えば、脇役ではなく、将来 チームの主役になれる可能性のある選手に限られる。

将来の、3・4打者を「我慢して育てる」という事で、その他の打順は、競争して勝った者という事が理想である。
因みに、この将来の主役になる能力は野球の技術的な面だけでなく、そのムードやチーム全体に与える影響力などの数字で推し量れない部分も加味されるものである。

さて、そこで 話をタイガースに戻そう。

柴田や大和も確かに良い選手だが、名脇役には なれても、主役には なれない。
彼等は、名脇役に徹する事が一流への道になる。

私が見た限り、今 その可能性を感じているのは、
野原祐也と森田一成、
である。

彼等には、野球の技術的な伸びシロは勿論、チームのムードを換えられるだけの魅力が備わっていると思う。

チームの屋台骨を支える主役を育てるには、相応の覚悟が 首脳陣に求められる。
守備や走塁に目をつぶり、彼らの武器であるバッティングを生かしてやる事だ。
これは、私の推測だが、彼等が 普段、コーチや監督に言われている事は、
「守備が上手くならないと1軍には行けないぞ」とか「バントやエンドラン、進塁打が出来ないと1軍では通用しない」 と言われ その練習をさせられている。
しかし、それは 彼等には不得意な分野なので なかなか上達しない。
その結果 1軍には推薦されない。
又、彼等も
上達しない自分に自信を無くす。
これでは 「育つ環境」ではない。
長所を伸ばす事より短所の修正の方が優先されている。
人を育てる事は 短所の修正ではない。

野原と森田には ムードを変えられるキャラクターと将来性があると思う。






(野球評論家)
広澤克実