DeNA戦が良い試合内容だっただけに、昨日の試合は、仄かに期待していた。

しかし、終わってみれば、案の定、という以上に言いようが無い程、想定の範囲内の試合展開、そして結果だった。

今シーズン、幾度となく繰返されてきた流れだけに、さすがに驚かないが、この驚かなくなってしまった事自体は、とても嘆かわしい。

昨日のドラゴンズの攻撃経過だけ見れば、ドラゴンズは逆転されるパターンである。
野球には、往々にしてある負けパターンだ。
しかし、タイガースは、それ以上の貧打で、ドラゴンズの負けパターンの試合を、投手の好投で逃げ切る勝ちパターンの試合にしてしまったのだ。
初回に3点を獲った後、2回以降、1安打というのは、逆転されるパターンなのだ。
それが、初回に3点取られると負けパターンという試合にしてしまったのだ。
どちらにしろ、共に、貧打戦だった。


今日の先発は岩田だが、岩田がいつも通りの出来であれば、ドラゴンズ打線も然程、得点は出来ないだろう。
只、タイガース打線も同じように雄太を打ちあぐねるような事があれば、打てない同士の戦いに一日の長があるドラゴンズが連勝する公算が高い。

タイガース打線を見ていると、まだ、投手としか戦っていない。
肝心の谷繁と戦っていない。
谷繁にとっては、タイガースの各バッターの狙い球を、ハズす作業は、意図も簡単に見える。タイガースの打者の考えている事は、あたかも顔に書いてあるが如く分かるのだろう。

各ピッチャーの球種や配球、パターン等は、あらかじめレクチャーされるが、それをその通り鵜呑みにして結果が出る程、プロは甘い世界ではない。

お互いに自らのデータを相手が理解している、という前提からの勝負なのである。

その意味では、狙い球が相手に見抜かれるような仕種や表情などは、論外である。

狙い球を絞ったら、次にやるべき事は、それを見破られない事だ。
これが、打者と捕手の駆け引きだ。
捕手は打者の動作や反応で狙い球を知ろうとする。
そこから、配球の組み立てをする捕手も居る。
谷繁は、打者の狙い球を見破る事に長けている。
元ヤクルトの古田クラスだ。

コンピュータで処理されたデータを、自分なりに分析し、それを生かす為には、当たり前だが捕手に悟られない事だ。

「騙しのテクニック」

これを指導出来る指導者は、なかなか居ない。

繰り返すが、ドラゴンズの貧打に付き合うと、ドラゴンズに一日の長がある。
タイガースのペースで試合をする為には、先取点が鍵だ。





(野球評論家)
広澤克実