私が、初めてマートンを見たのは、2010年の春のキャンプだった。
2月6日、練習後にスポニチの評論を書く為、記者に感想を聞かれた私は、酷くマートンを酷評してしまった。
(後に、彼に直接、謝罪しました。)
突然の赤星の引退もあり、球団の外国人獲得の姿勢も含めて批判した。

しかし、あのキャンプでの彼のバッティングは、酷評せざるを得ない内容だった。
只、テイクバックの取り方は素晴らしかった。
私が、若い頃、ボブ・ホーナーという凄いバッターに出会ったのだが、彼と同じテイクバックだった。
私も、そのテイクバックの技術を覚えようと何度も、何度も、練習したが会得出来なかった。
あのテイクバックが出来たら、もっと打てると確信していたので、必死に練習したのだ。
しかし、残念ながら、会得出来なかった。
だから、あの日の彼のバッティングは、今でも覚えている。
あの天才バッター、ボブ・ホーナーと全く同じテイクバックだったので
「もしかすると、化けるぞ」
と3月の雑誌の取材で答えている。

つまり、彼のバッティングフォームで一番良い所は、テイクバックなのである。
誰も容易には真似出来ない、素晴らしテイクバックである。
バットの引き方、高さ、移動する距離の全てが、理にかなっている。

それが、今、崩れている。
足を上げる事により、バットの移動距離が長くなり、又、足を上げる時間と摺り足の時間が違う為に、タイミングが合わず、トップがマチマチである。
そして、最も悪いのが、ステップした足の親指の向きが、投手方向に広がっている事である。
投手方向を12時、捕手方向を6時とした時、ステップした親指の方向は1時から3時が理想である。
簡単に言うと、彼のステップした足の膝のサラが、投手方向に向いてしまっているのだ。

マートンが一日でも早く、自分のバッティングを取り戻すには、自分の原点に戻る事だ。

自分の最高の長所であるテイクバックを生かす為に、ステップする。
自分の最高の武器を生かす為に、タイミングを計る。
彼とは、記事の謝罪後、交流が出来、彼の性格や人間性が素晴らしい事は、よく分かっている。
一日でも長く日本でプレーして欲しい。
その為にも、原点に戻り、あのマートンの良い時のバッティングを取り戻して欲しい。





(野球評論家)
広澤克実