昨日の7回、桧山の同点タイムリー。
止めたバットでヒットを打つ事は、年間、何回か見るが、あの場面で、しかも、タイムリーとは、桧山の持つ「運」を感じる場面だった。
桧山も、きっと心の中で
「ラッキー」
と呟いたはずだ。
さぞかし、マエケンは、がっかりした事だろう。
そして、きっと心の中では、こう呟いた筈だ。
「ツイてないなぁ」

只、たかが「ツキ」、されど「ツキ」。
勝負には、欠かせない要素である。

殆ど負けていた試合を、引き分けに持ち込んだ昨日の結果が、シーズン後半に大きな意味を持つことになるかもしれない。


ところで、昨日の試合で、疑問の残る場面があった。6回のタイガースの攻撃、安藤がヒットで出塁した後に、平野のゲッツー崩れでランナーが入れ替わった場面だ。

この1アウト1塁の場面で、和田監督の採った作戦はバントだった。

ここで興味深いデータをご紹介しよう。

バント=得点力ではない、というものだ。
過去5年間のデータによると、ノーアウト1塁のケース(多少ケースは違うが)では、バントよりもヒッティングの方が、得点する確率が高い。しかも、大量得点に繋がりやすいのだ。

すなわち、バントはそのイメージと違い、実際は、必ずしも効率の良い作戦ではないのである。

因みに、昨年のセ・リーグの最多バントチームはカープで180個、貧打のイメージが強いドラゴンズは3位で164個、タイガースは最少の118個だ。
やはり、バントと得点力はダイレクトには結びつかないのである。

ファンの中には、とにかくタイガースに勝って欲しい人や勝負とは別次元で純粋に野球を楽しみたい人、勝負の結果を度外視し「明けても暮れてもタイガース」な人、と様々だろう。

全ての人達を満足させる作戦は無いかもしれないが、データ等に裏付けされた、多くの人達を納得させる作戦は、あるのではないだろうか。



(野球評論家)
広澤克実