白衣のイメージとは? | hiro1号のブログ

白衣のイメージとは?

 今晩は。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今回は「白衣のイメージとは?」というお話です。

「白衣」と聞いて、皆さんは何をイメージするでしょうか。

 「白衣の天使」とも呼ばれる看護師さんでしょうか。それとも、ドラマ化もされた小説『白い巨塔』の財前教授の総回診のようにぞろぞろと歩く医師たちでしょうか。あるいは、ちょっと古い世代の方なら、1960年代にテレビ放送されたアメリカの医療ドラマ『ベン・ケーシー』かもしれません。ちなみに、現在「ケーシー型白衣」と呼ばれる半袖タイプの白衣の由来はこのドラマですが、そう呼ぶのは日本だけなのです。

 今回は「白衣の効用」と題して、普段は何気なく着たり見たりしている医師の仕事着について、特に患者から見たイメージや、患者-医師関係に及ぼす影響などを考えてみましょう。

 白衣が医師の服装として採用されたのは19世紀後半以降のヨーロッパやアメリカといわれています。それまでの医師は、なんと黒い服を着ていました。礼服のように、黒はフォーマルな場にふさわしい服と見なされていたのです。1875年にアメリカの画家Thomas Eakinsが大学病院での手術の様子を描いた絵では医師たちは黒い服を着ています。

 では、その後なぜ白衣を着るようになったのでしょうか。それまで経験や民間治療に頼っていた医学は、19世紀半ばに細菌学や解剖学の発達により飛躍的に進歩します。医学は「科学」の延長と捉えられるようになり、科学者と同じように「白衣」を着るようになりました。科学者は、薬品などから身を守り、清潔を保つために長袖の白衣を着ていたからです。さらに同じくEakinsが1889年に描いた、やはり大学病院での手術場面を描いた絵では医師たちは全員白衣を着ています。わずか14年という短期間に、医学が「科学的」なものへと劇的に変化した証拠といえるでしょう。

 現在では、医師の服装は非常に多様化しています。長らく標準的であった長袖の白衣は、感染制御の観点から「望ましくない」とされる時代になりました。白衣の袖などが細菌で汚染され、患者への感染源になっていることが示されたからです。イギリスでは2007年に長袖白衣の着用を原則禁止するガイドラインが出されました。それを受けて、半袖白衣の標準化が日本でも進んできています。外来や訪問診療の医師では白衣を着ない医師も増えているようです。また、もともとは手術用であった半袖Vネックの「スクラブ」を見かけることも多くなってきました。着替えが容易で、動きやすく、カラーバリエーションが豊富なことなどが人気の理由のようです。

 *東大医学教育国際研究センター 孫大輔先生のコラムを一部抜粋引用