WOWOW鑑賞
音ばかりが耳に残り…
監督・脚本:ブラディ・コーベット/脚本:モナ・ファストヴォールド/音楽:スコット・ウォーカー
出演:トム・スウィート/ベレニス・ベジョ/リーアム・カニンガム/ヨランド・モロー/ステイシー・マーティン/ジャック・ブーデ/ロバート・パティンソン
1918年、第一次世界大戦の終戦協定のため米国からフランスに派遣された父(リーアム・カニンガム)と共にパリ郊外の村に移り住んだ少年(トム・スウィート)と母(ベレニス・ベジョ)。慣れない暮らしのなか、家を空けがちな父に代わって、信仰の厚い母に厳しく育てられた少年だが、人に石を投げるなど奇行が目立つようになっていく。
哲学者ジャン=ポール・サルトルの短編小説「一指導者の幼年時代」に着想を得て、架空の独裁者の幼少期のストーリーを映像化。
ベルサイユ条約締結が背景。父の無関心と母の信仰。その両親に対する少年の2つの反抗が軸。終始バックに少年の心の歪みを表したかのような不協和音。何かが起こりそうな不安を煽る。
寒村にやってきた外交官一家である。村一番のセレブである。父は仕事に没頭し、教会にも顔を出さない。少年には欠けていた。善悪を教える人が。甘えられる人が。
信仰に対する反抗。父に対する反抗。さらに孤独な心の拠り所だった使用人モナの解雇。思春期の目覚め。人一倍敏感な少年にとってはどれもが思い通りにならない焦燥を生む。
少年役にトム・スウィート。名前のとおり甘いマスク。裏に秘めた狂気が垣間見れる美貌が怖い。この年頃にしか出せない匂いだ。
「アーティスト」のベレニス・ベジョが相変わらず美しい。ところが家庭教師役ステイシー・マーティンが輪をかけた美。序盤からドキドキさせられた。使用人役ヨランド・モローは「神様メール」のママ。立ち居振る舞いが同じ。
ラスト、成長した少年が現れる。架空としながらもヒトラーそのもの。「独裁者はこうして作られた」がベースであることが、最後に明かされる。
が、21世紀の今見ると違和感。サルトルの執筆当時、幼少体験に目を向けたのは新鮮だったのだろう。今、思春期の心の揺れは誰もが知っている。人に石を投げ、裸で走り回る。だから独裁者になった…は説得力なし。
不協和音がセリフよりも前に出てきて不快。イメージ重視なのだろう。挑戦的ではあるが物語に厚みがなくて響かず。少しはアレンジがあってもよかった。
hiroでした。