14本目(3月14日鑑賞)
それでも夜は明ける
監督・製作:スティーヴ・マックイーン
製作:ブラッド・ピット/ジェレミー・クレイナー/ビル・ポーラッド/アーノン・ミルチャン/アンソニー・カタガス
脚本・製作総指揮:ジョン・リドリー
音楽:ハンス・ジマー
出演:キウェテル・イジョフォー/マイケル・ファスベンダー/ベネディクト・カンバーバッチ/ポール・ダノ/ポール・ジアマッティ/ルピタ・ニョンゴ/サラ・ポールソン/アルフレ・ウッダード/ブラッド・ピット
ようやく北米首都部で「自由黒人」という言葉が生まれた時代。音楽家の黒人ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ワシントンで二人の白人に拉致され、不法に奴隷として南部へ売買される。合衆国として未成熟な米国にあって、南部ではいまだに奴隷制が慣例となっており、黒人は白人の「所有物」として扱われていた。
北部の自由黒人であることを主張し続けていたソロモンだったが、商人たちの拷問によりやがて口を閉ざすようになり、プラットという奴隷としての名前をつけられる。
信心深く、慈悲の心を持つフォード(ベネディクト・カンバーバッチ)、所有欲の強いエップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人の元を、奴隷プラットとして転々とするソロモン。外界との連絡をも断たれた絶望的な状況であっても決してあきらめることなく、生き延びるための過酷な日々を12年間、戦い続けた。
12年って…重い。
風だ。目をそむけるなという風。
あるテーマの関連作品公開が続いたと思ったら、たまたま観たDVDも同じテーマだったり。そんなことがある。昨年は太平洋戦争。そして今、人種差別の風が吹いている?
「自由黒人」という言葉にまず驚いた。「自由」な黒人。素晴らしいと思っていいのか。「自由」が付いていない黒人は、「自由ではない」という意味なのだから。
いろいろな国や地域で差別はある。それが、国民レベルで行われる理不尽。ようやく、そのことに気付いたこの大国の人々。差別のことを語り出し、耳を傾け始めた。この作品がオスカーを獲得したのは、そういうことでも意味がある。
慈悲の心を持つフォード。ならばなぜ黒人を解放しないのか。そういう時代だから。
終盤登場するバス(ブラッド・ピット)も「おかしい」と思っている。思っていてもそういう時代だから、確信が持てない。
矛盾だらけの時代。そういう時代だからしょうがないの?…「NO」と言ったね、オスカーは。
変だと思っても、何を変えればいいのかわからない。
人種差別を描いた数々の作品のことは「大統領の執事の涙 」で書いたので割愛。
実話を元に、拉致され、売られ、生還するまでの12年を追う今作。人間らしくとか、倫理的とか、そういう基準では観てらんない。最後に助かるソロモンに、助けを求めるパッツイー(ルピタ・ニョンゴ)。ソロモンは手を差し伸べない。自分のことで精一杯。それを酷い仕打ちだなんて、責められる?
黒人を所有物としか見られない、象徴的な存在。
hiroが薦めなくても、多くの方が観ると思う。なので、内容はこの辺で。
イジョフォーの体を張った熱演は言うまでもない。
カンバーバッチ×ファスベンダー。飛ぶ鳥を落とす二人の共演、豪華。違う種類の白人を演じる二人。考え方は違っても、奴隷を買う、という行為は同じ。マックイーン監督の目は、客観的で冷徹。
ブラピはゲストレベル。ブラピ観たさに行くならやめておこう。軽い気持ちで鑑賞すると、押し潰される。
ルピタは将来が嘱望されるアフリカ系女優。「キャプテン・フィリップス 」のアブディと共に、今年のアカデミー賞で脚光。そのルピタと張り合う妻役のサラ。一度似てると思ったら、キッドマンにしか見えなくなってた(笑)
ダノは、「カウボーイ&エイリアン」のハリソンのバカ息子。あの顔だから、嫌な役ははずさない。
プロデューサーの手腕も発揮。
意外だった音楽のジマー大先生。エンタメ専門のイメージが強かった。大河ドラマのスコアも書けることを証明? よかったけど、「ここは音楽が邪魔してる」と感じた箇所も、正直いくつかあった。
比較するのもなんだけど、「アメリカン・ハッスル 」より、受賞の意味のある作品。勉強したい方は「大統領の執事の涙」と併せて鑑賞を。メッセージ性は「大統領~」の方が強い。今作は事実を知ってもらおうという、意欲が優る。以上はあくまで私見。
ひたすら困難、ひたすら悲劇。どこか「おしん」と通じてる?
こんなことがありました、に徹してる。
主人公は生き延びたものの、決してハッピーエンドとは、いえない。
hiroでした。
脚本8 映像8 音響7 配役7 他(美術)8
計38/50