HDD鑑賞
北のカナリアたち
監督:阪本順治
原案:湊かなえ
脚本:那須真知子
撮影:木村大作
音楽:川井郁子
出演:吉永小百合/森山未來/小笠原弘晃/満島ひかり/渡辺真帆/勝地涼/相良飛鷹/宮﨑あおい/飯田汐音/小池栄子/佐藤純美音/松田龍平/菊池銀河/柴田恭兵/仲村トオル/高橋かおり/塩見三省/石橋蓮司/里見浩太朗
東京での仕事を退職したはる(吉永小百合)の元に刑事(石橋蓮司)が現れ、殺人事件の容疑者「鈴木信人(小笠原弘晃・森山未來)」の消息を尋ねる。信人ははるが北海道の離島の分校で教師をしていた時の教え子で、信人の所持品にはるの連絡先が書かれたメモがあったという。
信人を案じるはるは北海道を訪れ、かつての教え子である、真奈美(渡辺真帆・満島ひかり)、直樹(相良飛鷹・勝地涼)、結花(飯田汐音・宮﨑あおい)、七重(佐藤純美音・小池栄子)、勇(菊池銀河・松田龍平)を一人ひとり、訪ね歩く。
分校の子どもたち
…の20年後。
湊かなえ「往復書簡」を原案に阪本順治が映像化。吉永小百合と今が旬の若手俳優たちの共演が注目。
「往復書簡」は未読。手紙のやりとりで事件の経緯を浮かび上がらせる、作者得意の構成なのだろうと勝手に推察。「告白」と似たパターン。頭の中で組み立てる楽しさ。きっと小説は面白い。順序立てて映像にする。そうすると、やや一本調子。面白さは半減?…これも推察。
であるのに、「力のある作品」。ストーリーは一工夫。はるの行動のわけを、最後に披露する心憎さ。ラーメンのスープの底にチャーシューを発見したみたい。
力の秘密、もうひとつ。人間ドラマであるはずなのに、背景風景の主張が強烈。迫力の大自然。心までも縮こまる雪景色から、開放感あふれる夏の草原。それらの背後に、ドン!と腰を据える利尻富士。景色を撮らせれば世界一のカメラマン・木村大作の真骨頂。「剱岳」の感動が蘇る。この風景も、主役の一人。
ひかりちゃんは「クヒオ大佐」のイメージかな。
さらに役者力。よくぞ集めた、このメンバー。奇跡の共演。若手メンバー&子役たちの存在が、大物女優吉永さんを凌駕する。
圧巻は森山君。終盤にならないと出てこない。なのに、背景にいつも森山君を感じる。そして出てきた彼の姿。なんの違和感もなく受け入れられる。再会した時の感情の爆発。「のぶちゃん」が大きくなった、そのまんま。阪本監督、この後「人類資金 」でも森山君を起用。そこでもやはり、最高の演技。
勝地君と…
…あおいちゃん。
「東京メリケンサック」カップルじゃん(笑)
勝地君も好きな俳優の一人。で、あおいちゃんは大ファン。この二人、分校の頃からいろいろある。大人になっても引きずって…。この二人、「東京メリケンサック」 のカップル。あのぶっ飛んだカップルは、ここでは重~い過去を背負うカップル。役者って、凄い。
白い肌が北海道にあう龍平。
まだいる。小池栄子はもはや大物。体型ではない、貫録が。子役の子もひときわ大きい。吉永さんの「大きくなって…」のセリフに和む。
龍平は顔が青白い。お父さんと同じ。これがまた北海道チック。思えば「探偵はBARにいる
」も北海道。彼は北海道が似合う。
クライマックス。ここは泣ける。
ストーリーはふつう盛り。超絶ミステリーでも、感動の渦でも、ない。吉永さんも、名前にふさわしい活躍とはいえない(サユリスト世代は読んでいないと推測)。構成も阪本監督、頑張ったけど…。この映画を大盛りにしているのは、木村大作と森山未來…だと思った。個人的に。
hiroでした。