55本目(10月20日鑑賞)


M資金の「M」は森山君の「M」?
観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-js1
人類資金


監督・脚本:阪本順治

原作・脚本:福井晴敏

撮影:笠松則通 編集:早野亮

美術:原田満生 音楽:安井午朗

アクションコーディネーター/諸鍛冶裕太

出演:佐藤浩市/香取慎吾/森山未來/観月ありさ/岸部一徳/オダギリジョー/寺島進/三浦誠己/石橋蓮司/豊川悦司/ユ・ジテ/ヴィンセント・ギャロ/中代達矢


第二次世界大戦の終戦間際、日本銀行の金庫から大量の金塊が姿を消した。一部の軍将校によって、「日本の戦後復興のため」に隠匿されたというその金塊はGHQに接収され、その後日米共同の財団により戦後復興の資金として使われ、現在も「M資金」として極秘裏に運用されているという。
総額10兆円ともいわれるM資金の「噂」をエサに企業をだましている真舟(佐藤浩市)の前に、「財団の使い」と名乗る男・石(セキ)(森山未來)が現れる。指定されたビルを訪ねた真舟は待ち伏せしていた高遠(観月ありさ)ら「市ヶ谷」と呼ばれる謎の集団に襲われるが、石に救われ、M資金を運用しているという財団のM(香取慎吾)に引き合わされる。

金本位の経済はいつしか実体のない紙幣によって支配され、人類のためという崇高な目的に使われるはずのM資金も、ある投資ファンドによってマネーゲームの中に埋もれてしまった。M資金を取り戻し、本来の目的に使用するため、金本位の経済に戻すために、真舟に手を貸してほしいと提案するM。真舟は世界を股にかける「裏経済」の争いに巻き込まれていく。


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「許されざる者」「清州会議」…

大作の出演が続く浩市さん。


徳川埋蔵金とともに都市伝説的な匂いを放って、まことしやかにささやかれる「M資金」。フリーメイソンが絡んでいるとの噂もあるとか。そんな歴史ミステリーなわけですが、残念なことに、hiroはその噂の存在すら知りませんでした。なるほど、これは面白そう、と思って、たいした事前情報もないまま、シアターに足を運びました。この予告編がまた、壮大なスケール感があって、よくできているんですよね。


なんでも、「M資金」は阪本監督が温め続けた題材であり、「亡国のイージス」で組んだ作家・福井晴敏に原作を依頼。脚本にも絡んだ福井は、小説と脚本を同時進行で進めるという異例の作業。結果として、映画作品と違う視点やエンディングの「別ヴァージョン」もできてしまったという。

そんな阪本監督の熱意に駆られたのが、本作の主人公・真舟を演じる佐藤浩市。阪本監督の盟友だったりする。 森山君も「北のカナリア」に続く出演ですね。「北のカナリア」…観てないな~。久々の娯楽大作出演の仲代達矢さんも見どころのひとつですね。

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娯楽作品ばっか観てるので、

仲代さんはホント久しぶりでした。


で、本編の話ですが、先ほど予告編がよくできている、と書きました。そうなんですよ、あの予告編はよくできすぎていて、本編が予告編についていけてないんです。

「M資金」 …これの認知が低いのがひとつの問題点。この説明から入らなきゃいけないんだけど、これが複雑で、定説みたいなものもあやふやみたいで、よくわからない。わからないまま、裏経済のマネーゲームに引きずられていくんですね、我々も。
なので、最初は「謎のM資金」の真相に迫る歴史ミステリーなのか、と思ってました。タッチは違うし、リアリティーは全然ないのですが、「プリンセス・トヨトミ」みたいな空気ですね。出だしはそんな具合だったのですが、真舟が参加して、極寒のサンクトペテルブルグの財団事務所にサギを仕掛けに行くあたりから、アクション映画に。仮想の地域の紛争地帯に飛ぶに至って、テーマは人類愛に。さらに、ニューヨークに舞台を移し、国連本会議場を使ってのロケに向かってクライマックスを迎える。

ミステリーだったのか、クライム・アクションだったのか、「人類」をタイトルに入れたとおり人類愛の映画だったのか。まるで3人の監督がバトンタッチで撮ったようなめまぐるしさ。正直、これについていけなかった。なので、入っていけずに。少々厳しい2時間半、でした。


ただし、hiro推し森山君の存在感には圧倒。財団のエージェントとして影を背負いながら闇に暗躍する表情と、紛争地帯の彼の故国(彼の役は日本人ではありません)に帰り、子供たちに囲まれた時の笑顔の対比。本当に役者として器用です。さらにアクション。「フィッシュ・ストーリー」の時にみせたカンフーばりのアクションも、よりリアルな格闘術としてグレードアップしています。圧巻は映画の大ヤマに配置された国連での演説シーン。初めて映画の撮影クルーが足を踏み入れた、本物の国連本会議場で、しかも与えられた時間はわずか。そんなプレッシャーの中、当然のようにスピーチは英語。これは、森山君の映画人生の中でも、そうとう痺れた瞬間だったのでは。去る方のブログで判明したところでは、このシーンは3台のカメラを同時に使っての、長回し一発撮りだったらしいです。森山君に拍手です。


ファンが多い阪本監督ですが、作品全般にはやや不満残り。

とはいえ、森山君の頑張りには、目を見張るものがありましたよ。




hiroでした。

…森山君、ベタ褒めだね(笑)