1991年 台湾ニューシネマ
楊徳昌(エドワード・ヤン)
【牯領街少年殺人事件】
この作品、ヤン監督の中でも代表作と評価されているのですが、配給会社の倒産、その他利権の関係で公開25年以上たっているのに、日本ではDVD化されておらず、映画ファンの間では【幻の傑作】となっていたんです。
この度、本作を愛するスコセッシ監督(タクシードライバーの監督ね!)が設立した会社のフィルム修復事業により、【4Kレストア・デジタルリマスター版】として、めでたく日本でも再上映される事になりましたー
・・・と言ってもこの情報ずいぶん前の事で、とっくに終わってた
はぁ・・・見逃した💧
次の上映はいつー❓
日本語字幕のDVD発売いつー❓
だったんですけどね、渋谷アップリンクでまた上映してたんですよ〜❤︎
この映画、1960年代の初頭、台湾で実際に起こった中学生同士の殺傷事件がベースになってます。
さて物語の始まりです❗️
時代は1960年代初頭。
主人公シャオスーは外省人と呼ばれる蒋介石率いる中国国民党が、毛沢東率いる中国共産党に敗れた後、台湾に移住してきた中国系の民族です。
シャオスーの父は、上海から渡って来たインテリ公務員なのですが、共産党員との関係を疑われ公安警察から尋問をうけるなど、閉鎖的で排他的な空気に疲れ切っています。
内省人(元々台湾に住んでいる人達)との軋轢、不安定な社会に大人達はピリピリしているのですが、そんな解消されない不安感が少年達に伝染していきます。
さて、優等生のシャオスーは、まさかの受験失敗により、夜間中学校に通うことになります。
そこでシャオスーは儚げな少女シャオミンに出会い、淡い恋心を抱くのです。
シャオミンは、不良ギャング団同士の抗争でボーイフレンドを失くしてしまい、何日も学校を休んでしまう。
久しぶりに登校したシャオミンにシャオスーは、
「僕がずっと一緒にいてあげる。君の事を守ってあげる。」と、まっすぐな感情をぶつけます。
ふっ・・・聞いている私の方が赤面しちゃうぞ。
可愛いぞ、シャオスー❤︎
そんな訳で、一緒に学校から帰ったり〜
映画の撮影所にこっそり忍び込んだり(学校の隣に映画撮影所があるんです。)
可愛らしいデートを重ねていきます。
ここまでだとね、1960年代台湾のボーイミーツガール的なストーリーなのですが、社会不安のウイルスに感染してしまった様な少年達、始めは敵対グループとの小競り合い程度が、だんだんと本人達も想像できない様な凄惨な事件に巻き込まれていってしまう・・・。
そして清楚な少女に見えたシャオミンの良くない噂を聞かされるシャオスー。
何人もの男達と、恋愛関係を結んでいると・・・。
そう、シャオミンはギャング団のリーダー、その後釜を狙う副リーダー、母親の雇い主であるボンボン息子、さらには学校に出入りしている青年医師など、たくさんの恋人がある事が分かってしまう。
シャオミンは住込みで家政婦をしている病気がちな母親と、転々とする不安定な暮らしをしています。
シャオミンの少しでも強い男、権威のある男の側にと願うのは、脅かされずに生きて行く術なのか❓
それでもシャオスーは、
「僕は君の事を全部知っているよ。」
「でもいいんだ。僕だけが君を救う事ができる。」
「君には僕だけだ。」と。
その言葉にシャオミンは
「あなたも他の人と同じ。」
「優しくして、感情の見返りを求めるのね。」
「でも私はこの世界と同じ。変わる事はないわ。」
シャオスーの言葉に支配欲を感じてしまったのか?
傲慢さが鼻に付いたのか?
その後シャオスーは、持っていた短刀でシャオミンを刺してしまう・・・。
拒絶された絶望感か?
注いだ愛情をバッサリ切り捨てられた憤りか?
その後シャオスーは、道路に倒れ込んだシャオミンを揺すって起こそうとします。
「シャオミン、起きてよ!ねえ、立ってよ!」と何度も何度も。
この顛末に、なんともやり切れない気持ちでいっぱいだったのですが、警察に引き渡された際、シャオミンの返り血を浴びたシャツを着替える様に言われた時・・・
それまで俯いていたシャオスー、力の限り暴れて新しいシャツに着替えさせられる事を拒むんです💧
「シャオミンと離さないで!!」
「シャオミンと離さないで!!」
もうこの世界にいないシャオミン。
しかも手にかけたのは紛れもなく自分自身。
残ったのは、シャオミンの返り血の付いたシャツだけだ。
何ともやり切れない…💧
シャオスーは、いたって普通の男の子でした。
この事件、不安定な時代が引き起こした悲劇的事件と片付けちゃうのは簡単なんですが…。
まだまだ半分子供な少年、社会を受け入れ、諦め、一足先に大人になってしまった少女の相容れない感情の行き違いの末の悲劇だった様にも思えます。
それにしても、ヤン監督の映像はとても美しかった。
夜間学校が舞台という事、電気の供給が不安定で年中停電が起こるので、全体的に夜の暗いシーンが多いのですが、その中でのロウソクの揺らめき、裸電球の灯り。
ストーリーの中で、シャオスーが撮影所からくすねてきた懐中電灯が象徴的に登場します。
シャオスーは片時も離さず持ち歩いているのですが、不安な気持ちを取っ払う光だったのかな?
ただ懐中電灯の灯りは、ほんの少し先しか照らしてくれず、心許ないんです。
映画のポスターに
「この世界は僕がてらしてみせる」とあるのですが、なんとも切ない気持ちになります💧
少年少女の痴情のもつれからの殺傷事件、ワイドショーネタになってしまいそうな話ですが、支え合う家族の話し、粋な男の友情、もちろん少年少女の淡い恋模様などいろんな愛を感じる事ができます。
シャオスーが刑務所に収監されている時も、メッセージを吹き込んだテープを差し入れるなど情に厚い男の子です。(結局差し入れのテープは、刑務官により即ゴミ箱行きでシャオスーには届かないのですが💧)
3時間56分・・・の長〜い映画、しっかり目に焼き付けてきましたよ!
もちろん休憩タイムはありませんでした💧
おしり痛い・・・。
素敵な俳優になってました❤︎