ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた~  女にしか分からない作品なのかも? | 新・伝説のhiropoo映画日記

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映画が好きだ。ドラマも好きだ。
そして、イケてる面はもっと好きだ。

そんな好きなものが詰まった日記、読んでみるかい。



2006・米     ★★★☆☆(3.8)


監督・出演:エイドリアン・シェリー

出演:ケリー・ラッセル  ネイサン・フィリオン  シェリル・ハインズ  ジェレミー・シスト  アンディ・グリフィス



アメリカ南部の片田舎。  小さなダイナーで働くウェイトレスのジェンナ(ラッセル)は、パイ作りの天才。

その時の気分そのままで作り出されるオリジナルレシピのパイの数々は、胃袋だけでなく心までもを

満たしてくれると街の評判だった。


「サボっている間があったら、さっさと働け」と何時もウェイトレス達を叱り飛ばす店長のジョーと

何もかも包み隠さず話が出来る同僚のウェイトレスのベッキー(ハインズ)とドーン(シェリー)がダイナーの

仕事仲間。


<左からベッキー  真ん中がパイ作りの天才ジェンナ  ちょっと風変わりなドーン>


ジェンナの小さな夢は、隣町で開催されるオリジナルパイコンテストに出場する事…。

これだけ人気のパイを作れるジェンナだから、出場すれば優勝間違い無しなのだが…。

そんな事すら許してくれない、とても嫉妬深い夫・アール(シスト)の事が、ジェンナにとっては唯一の悩み。

顔はイケメンなのだが、些細な事にすぐ癇癪を起こし、大した稼ぎも無いくせに偉ぶるアール。


実は、アールの事が嫌で嫌で堪らないジェンナは、チップの稼ぎの少しだけをアールに手渡し、後は家中の

至る所にへそくりしていた。

そう、ベッキーやドーンと相談して「パイコンテストに出場する参加料やら、家を出た当座の資金」なんかも

必要と…。  そしてお金が溜まり次第家を出る事を計画していた。



資金も溜まった為に、家を出ようと考えていた矢先…。  妊娠検査薬の窓に妊娠の2本線がハッキリと出た。

家を出る事も出来ず、さりとてアールの子供なんか産みたくも無いジェンナは、本当に八方塞状態。



仕方なく、妊娠が事実かどうかを確かめる為にジェンナが生まれた産婦人科を訪れる事にした。

ところがジェンナを取り上げたおばあさん先生は引退して、診察室に現れたのは超イケメンの産婦人科医

ポマター(フォリオン)先生。

血液検査の結果、先生は「オメデトウ御座います!」と大きな声で言ってくれたけれど…。

目出度くも何とも無いよ!ジェンナは思わず「そういう言葉は言わないで」と言ってしまいます。


ただ妊娠して、子供を産むだけ。  それだけの事なのよ。 そう何度も自分にも言い聞かせる…。



遂にアールに妊娠の事がバレてしまった…。  「妊娠したの…」そう言ったら、何と言ったと思います?

あの馬鹿夫は「赤ん坊より、俺の事を愛してくれるのなら産んでも良い」だって…。


それに引き換え、ポマター先生は誠実で優しい。  

妊娠が判明してもちっとも喜ばないジェンナの事を心配する先生は「何かあったら何時でも電話してきなさい」と

言ってくれる…。



あんまり優しい先生の態度に、ついムラムラしてしまったジェンナは、「イケナイ」と知りつつも、気付いたら

ポマター先生に飛び掛かって、キスしちゃっていました…。

でも、先生の薬指にもリングが光っています。  不倫はイケナイ事と分かってはいるけれど…。


ポマター先生もジェンナのパイにやられた訳では無いけれど…。

どうする私?  このまま、関係を続けながらアールの子供を産むのだろうか?

どうするんだ?  そんな悩みもパイのタイトルになってしまう。  根っからパイ作りの名人…ジェンナ。



ジェンナの奇妙なタイトルだけど味は絶品のパイを紹介ケーキ


惨めな妊娠と自己憐憫パイ … マッシュしたフルーツケーキとオートミールのパイ


不倫でアールに殺されるパイ … ブラックベリーとラズベリーを潰し合わせて、チョコレートクラスとを入れる


憎き亭主!パイ …  ビタースイートチョコを底辺にひいて、砂糖は一切加えずに熱々のカルメラを流し込む




《***》

監督は女優でもある、エイドリアン・シェリー。  この作品では、眼鏡のちょっとイケテナイドーン役をやっている。

ちょうど、彼女が妊娠中に原作を脚色し、当初限定公開の小規模作品ながら口コミで広がり、ボックスオフィス

TOP6位にランクインした話題作品。


その上に作品完成後の2006年11月に、惜しくも他界してしまった。 享年42歳と言う若さ。

当初、原因は自殺とされていたのだが、リフォーム工による殺害と言うショッキングな事件となった。



ジェンナが出産する女児役・ルルをラストショットで、ジェンナがルルと手を繋いで歩くシーンをやったのは

エイドリアンが脚色していた時に妊娠していた実子が登場している。


とまぁ、本来は地味な作品ながら作品以外のところでも、色々な話題性があった作品がやっと日本で公開された。


が予告を見て、その時は「物凄く見たい」と思った作品だったが、その内容は意外と一般受けは難しいのでは?

と思う様な内容であった。

その辺にある、ラヴコメとも少々違う。  

ストーリーの流れとすれば、お子ちゃま夫に耐えかねて家を出ようとするのだが上手くいかずに、その上に

事もあろうか妊娠までしてしまう。

当然、信仰上の問題も有りジェンナ自身も中絶と言うチョイスは、彼女の中には全く無い。

しかし、子供を授かった喜びもまるでナッシング。  

悪阻やら、徐々に動きが悪くなる自分に対して始終「子供なんか要らない」と口をついて出てしまう

まだ見ぬ我が子に対しての悪口…。


意外とこの手の作品には珍しい感じを受ける。  

その上に「一目遇ったその日から~」ヨロシク、幾らハンサムかもしれないが産婦人科医に行き成り飛び掛る様な

突飛な行動すら見せるジェンナ。

何処からどう見ても、例え100歩譲ってもなかなか共感し辛い、主人公の思考回路。


       

ところが、この作品の上手く出来ている所は、一見共感出来ない様に見えても、ジェンナの正直な気持ちが

あまりにもストレートに表現されている事に戸惑うだけであって、ラストのルル誕生を機に一変するジェンナに

突如降って湧いて来る様な母性に見ているこちら側も、全身で彼女の気持ちを理解しちゃう状況に陥らせる…、

その辺は、流石に出産を経験した監督の気持ちも大いに篭っている事なんだろう。


そして、この作品の目玉のジェンナの頭の中で作られていく、パイのレシピとそのパイに付けられた

思わず苦笑せざるを得ないそのタイトル。

どう見ても、「ちょっと私は…」と退いてしまう様なパイも無いではないが、その色使いと良い楽しくポップに

作品に花を添えている。



私がこの作品でのお気に入りは、ジェンナのパイが大のお気に入りの頑固で融通の効かない爺さんの客と

ジェンナとのやり取りが、粋でお洒落で大好きだった。



この作品を見終わった頃には、「世の中は一筋縄では行かないけれど、満更捨てたモンでもない!」って

気付くのでは、無いかしらん!  でも、あくまでも女性の感覚なんだろうなぁ~。


しかも、メチャメチャデカクなってしまった腹を持ち上げながら「もしかして、一生出てこないのでは?」とか

「もしかして、私は一生このオーバーオールを着たままかも!」何て、不安を持った事をつい思い出してしまう

ちょっと薄情な面を持っている私の様な女にしか分からないのかも…。  どうかな?貴方は…。