萩本欽一氏の心に響く言葉より…
僕が子どものころ、浅草界隈には下町の言葉、江戸っ子口調がまだ色濃く残っていました。
今は下町でも山の手でも、あまり言葉が変わりません。
ちょっと寂しいですね。
下町独特の言葉、言い回しが消えて、下町気質(かたぎ)も消え失せた気がしますから。
下町気質とは何か。
僕に言わせれば「進んで損をしよう」という気質。
「得」することはどうにも性に合わない、金がなくても食べる物がなくてもやせ我慢して、どんどん人にやっちまえ!
そんな気質ではないかなと思います。
たとえば家に野球のボールが飛んできて窓ガラスがガシャーンと割れて、思わず「誰だ!」と怒鳴ったら、「おじさん、ごめんなさい!」とバットを持った小学生の男の子がやってきた。
そんなとき、「なんだ、坊主か。いいよ、いいよ、ガラスを割るぐらいボールを飛ばすなんて元気があっていいや。あやまんなくていいよ」なんていうオヤジさん。
こういう人が下町にはいました。
かつては蕎麦屋(そばや)に入ると、会計をして出ていく人から「釣りはいらねえよ」という言葉がよく聞こえてきたものです。
こういう言葉や、その気持ちに運が宿ると僕は思っています。
損の仕方がうまい人。
だけど、今はそういう人も少なくなりました。
蕎麦屋を例にして言えば、蕎麦に一本毛が入っていようものなら、「バカヤロウー、毛が入っているじゃないか」っていきなり怒鳴る人が増えてきた。
もちろん悪いのは蕎麦屋にしても、クレームの言葉が悪いと「申し訳ございません」と紋切型の回答しかこないから、いい人間関係が築けない。
下町の粋な言葉を見直してみると、薄っぺらくなった人情もまた厚みを増すような気がするのですが。
萩本欽一氏は「言葉」について本書の中でこう語る。
『いい言葉を聞くと、とてもうれしくなります。
同様に、自分がいい言葉を話すと、周りの人もうれしくなって、いい気分になります。
そうやっていい循環が生まれて、いい運がやってくると思うのです。
だから僕は、いつも発する言葉一つひとつを大切にしたいと思っています。
いくら努力をしても、自分に風が吹かないときは必ずあります。
何をしても裏目に出て、うまくいかないときもあるでしょう。
ダメなときでも、言葉を磨くことで、いい運を引き寄せることができます。
何も話し方を変えるというのではありません。
ほんのちょっとした心がけでできることです。
人生は言葉の積み重ねです。
その都度、どんな言葉を話すかで、終着点も大きく変わると思います。』
嫌なことがあったり、ダメなときは、言葉を磨くチャンス。
普通なら怒ってしまうようなシーンでも、それを気の利いた言葉で返す。
そして、自分が少し損するようなことを言う。
それはたとえば、何かがあったとき、自分が率先して損な役回りを引き受ける。
誰もがやりたがらない仕事を気持ちよくやる。
すると、いつか、誰かが運をもってきてくれる。
進んで損ができると人に恵まれる。
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