法政大学大学院教授、坂本光司氏の心に響く言葉より…

 

 

人生は思うようにはいかないものです。

 

就職や転職のときに、自分の志望どおりになる人は限られています。

 

私が大学で学部生に教えていたころには、「20社目に受けた会社にやっとの思いで入りました。だけど、自分が行きたかったのはこんな会社ではありません」といった相談をよく受けたものです。

 

 

たとえ希望の会社に入ったとしても同じことです。

 

希望する部署に配属されるとは限りませんし、不本意な異動をされることもあります。

 

そんなとき、なかには、「こんなはずじゃなかった」「自分は負け組だ」などと考えてしまう人がいます。

 

そして、気持ちを腐らせていってしまうのです。

 

 

しかし、長年生きてきてさまざまな人物と接してくると、優れた人物が必ずしも「望む仕事」に就いたわけではないことに気づかされます。

 

むしろ、そうではない人が多い。

 

たとえば、伊那食品工業を育て上げた塚越寛さん。

 

 

この会社は、まさに「奇跡の会社」です。

 

「会社は社員の幸せのためにある」という塚越さんの信念に基づき、50年以上にわたってただの一度もリストラをせず、一貫して安定的に好業績を上げてきました。

 

しかも、斜陽産業である寒天メーカーでありながら、たえざる新商品開発によって「同業者と争わない」=「敵をつくらない」という戦略を貫いてきたのです。

 

その経営哲学を学ぶために、連日のように大企業幹部が訪れているのも頷けます。

 

そんな塚越さんは、その実績、識見、人格において、私がもっとも尊敬する経営者のひとりです。

 

 

しかし、塚越さんの経歴を聞くと多くの方が驚きます。

 

というのは、塚越さんの最終学歴は中学校卒だからです。

 

高校生だった17歳のとき、当時死の病だった結核を患ったため入院を余儀なくされ、高校を中退せざるをえなかったのです。

 

入院は3年にも及びました。

 

青春を謳歌(おうか)する同年代の若者を横目に病室に閉じ込められる日々を、どんな思いで過ごしたことでしょうか。

 

哲学書や経営書を読みふける毎日だったそうです。

 

 

奇蹟的に回復した塚越さんをさらなる苦難が襲います。

 

中学校卒で3年間も病に臥せっていた塚越さんを採用してくれる会社がなかなか見つからなかったのです。

 

さんざん悔しい思いをされたことでしょう。

 

そして、長野県伊那地域の地場産業である製材業を営む会社に、なんとか就職できることになりました。

 

 

この会社で、塚越さんは誰よりも一生懸命に働きました。

 

「働けるということ、今日も生きていたということが嬉しくて嬉しくて、当時、人の3倍は働きました」と振り返ります。

 

しかも、闘病中に熟読した書籍によって得た知識をもとに進んだ言動をしていたものですから、自然と経営者の目にとまるようになります。

 

 

そして、「あいつならできるかもしれない」と、その会社の関連会社で業績悪化によって銀行管理下にあった「伊那寒天工業」の実質的な社長に抜擢されます。

 

そのとき、塚越さんは弱冠21歳。

 

化学書や科学書を読み込みながら生産機械に改良を加え、経理体制を整え、営業に駆け回りました。

 

休みといえば正月くらい。

 

それだけの努力を重ねて、一歩ずつ自らの理想とする会社を築き上げていくのです。

 

 

人生にとって大切なのは、「希望する仕事」に就くことではなく、「与えられた場所」で全力を尽くすことなのです。

 

その結果、当初、思いもよらなかった形で自分の「理想」や「夢」が実現する。

 

人生とは、そういうものなのです。

 

 

もちろん、人を人と思わないようなブラック企業や、どうしても自分とは合わない会社であれば話は別です。

 

しかし、たいていの会社はさまざまな問題を抱えながらも、常識の範囲内で運営されているものです。

 

石の上にも3年といいます。

 

不満に思うことがあったとしても、その仕事を通してお客様や仲間、そして自分を幸せにできる可能性があるのであれば、「雇ってくれた会社・職場」=「与えられた場所」にじっくりと腰を据えて頑張ってみることです。

 

「目の前の仕事」に全力を尽くすことが、人生を拓(ひら)く第一歩なのです。

 

 

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昨今は、少しプレッシャーがかかったでけでもブラック企業、などと言われてしまう非常にセンシティブな時代だ。

 

しかし、人を人とも思わないようなブラック企業は別にして、自分の希望に100%沿うような仕事などないに等しい。

 

「思ってもみなかったような仕事や、部門」に配属されることは普通だし、こんなはずじゃなかったと思うことは多い。

 

そして、たいていの人は、その現状に対して文句や泣き言をいい、愚痴をこぼす。

 

 

しかし、それとは真逆の人もいる。

 

どこに配属されても、その場やその仕事を愉(たの)しみ面白がってしまう人だ。

 

愉しければ、それがたとえ厳しい条件や環境であったとしても、ぜんぜん苦にならない。

 

 

『「目の前の仕事」に全力を尽くす』

 

思うようにいかない現実を愉しんでしまうような人には、限りない魅力がある。

 

 

 

 

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