コロナ記【ホテル篇2・幽閉の身】 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。

ホテル篇、つづきます。

 

★情報摂取と連絡が自由なムショ


1日のスケジュールは次の通り。

7:00   検温&パルスオキシメーター測定のアナウンス
7:30〜8:30  朝食
12時までのどこかで看護師の問診(電話)
12:00〜13:00   昼食
16:00  検温&パルスオキシメーター測定のアナウンス
18:00〜19:00  夕食
(発熱している人は20:00にも測定)

朝7時にデカめの全館放送で強制的に叩き起こされるんだけど、それ以外は自由。
ホテルには無症状&軽症の陽性患者が入っているのだけど、我らがやることは2つだけ。朝と夕方の検温とspO2(血中酸素飽和度)を測定し所定のサイトに記入すること。問診で体調を報告すること。以上。あとは三度出されるメシを食うだけ!基本ルールは下記の通り。

・ごはんタイム以外は一切部屋から出ちゃダメ
・洗濯ゴミ捨て等は自分でしてね
・シーツの交換は原則しないよ
・欲しいものあったら家族や友人に差し入れしてもらって
(差し入れがある人は前日夕方までに申告必要)
・スタッフは常駐してるけど陽性者エリアには絶対に出てこない


部屋にはWi-Fi通ってるのでPCあればお仕事もオンライン会議もできるし、通常なら有料の放送も無料で観れるし(※エロコンテンツは皆無)、それだけ聞くといいんだけど、とにかく牢獄ぽさがすごかった。

牢獄ぽさの理由① 部屋が狭い。
私のいたホテルはシングルの部屋が11平米。幸いベッドはW仕様なので大きく、従って部屋の8割をベッドが占拠、残りの2割は机なので動ける場所はほぼない。でかいスーツケースと一週間ぶんの荷物をおさめておく場所もなく、とにかく窮屈。遠征などでビジネスホテルに泊まる時はまさに「寝るだけ」だったので何の問題もなかったけど、1週間部屋でくつろぐことを目的に作られた部屋じゃないもんなあ。

牢獄ぽさの理由② とにかく出れん。
日に3回、食事の時だけエレベーターを使ってロビーに降り、まず部屋のゴミを捨てる。お弁当や水、アメニティなど必要なものを取り、お弁当をレンチンする。また部屋に戻る。これだけの行動しか許されない。つらい。食事どきは「こんなにたくさんの人がいるんだ!」ってくらいごった返すんだけど、誰ひとり口を開かないので静寂そのもの。みんなよれよれの部屋着にスリッパでどことなく元気がなく、ロビー内の活気はゼロ。大勢いるのに全員孤独。まるでゾンビのような我々であるよ。

刑務所だって日中は作業場で作業、日に一度中庭で運動とか許可されるじゃないですか。でも我らにはそんなものは許されないので、「これは囚人よりも過酷なのでは…」と思いながら暮らしてた(いやネットもTVも電話も許されてるけどね)。

身体はどんどんなまり、入所前の筋肉もどんどん消失(?)してゆく感覚しかなかったので焦ってスクワットとかジャンピングジャックスとかやってみたけど、全力で運動できるほどの元気はないとこがまたアカンとこで。
「ならばPCでいろんな作業をすれば!」と思っていたのだが、コロナのせいか1時間くらいPCに向かっただけで目も頭も痛くなりぐったりしてしまうのだ。スマホもおなじく。結果、デジタルなものの中で身体にいちばん支障がないのがTV。いちばんいいのは本を読むこと。というわけで夜はずーーっと本読んでました…。


★衛生面もつらい
最初に規則を読んで「むり」と思ったのはシーツの交換がないこと。あわてて事務局(フロント)に電話し、毎日寝汗をかいて起きるのでシーツとまくらカバーは毎日交換できないかとたずねたらあっさりOKが出て拍子抜け。そこから毎日、ロビーに部屋番号を書いた袋(換えシーツ入り)が置かれるようになった。「汗かいた後のシーツはどうすればいいですか?」と聞いたら「捨てちゃって下さい」と言われてビビる。そうか、陽性患者の使ったものをピックアップして洗濯できないんだ…。使ったものが廃棄処分になるって、激ヤバ伝染病患者になった気分だ。いやまぎれもなくそうなんだった、私。

もちろん部屋に清掃も入らないのでこれも気分的にこたえた。エレベーターホールに共有のコロコロが置いてあるので、食事タイムの時にとってきてそれで部屋のゴミやホコリを取るしかない。
日数分の服は持ってきてないので、部屋着、寝巻き、下着を毎日洗濯することになった。バスタブに少量のお湯をはり、持参した洗剤小分けパックを溶かしてえっちらおっちら手で洗濯する。無理な体勢をとるし手の洗濯は体力を使うので「私はいま元気だからいいけど、熱がある人はこれ無理なのでは…」と思った。当たり前だがベランダはないのでユニットバス内に洗濯物を干すしかなく、なるべく早く乾かしたいからめちゃくちゃ頑張って水を絞ることになるのだが、雑巾みたくぎゅうぎゅう絞るから生地は痛む。ホテル行きが決まったら、そう扱っても惜しくない、どーでもいい服を持っていくことを強くおすすめします。



※あの、またお断りしておきますが「扱いがひどい」「運営がだめ」とか言いたいわけでは全然ないです。だってこの対処しょうがないもん!こうするしかないもん。ホテルに常駐してくれて、毎日生活を回してくれるスタッフさんや、我々の健康チェックをしてくれる医療チームの方(少しでもspO2が低かったり体調異変の旨を書いたらソッコーで電話かけてきてくれる)は姿こそ見えないけど24時間対応でやってくれてるはずだし、彼らの安全を守るためにもこれしかないのだろうなと思ってます。これは幸いにして軽症で済んだ私ののんきな愚痴なのですみませんです…。