はからずもセンター | フーテンひぐらし

フーテンひぐらし

永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



いつもフラリとひとりで行くお寿司屋さんがある。
(都内でよく見かける、回ってないチェーンです)

静かで、清潔で、広々してて、シャリがちいさめなので
誰かとワイワイの時には来ないが、ひとり寿司だと重宝なのだ。

L字のカウンターには男女問わずひとり客も多い。

でも何故だろう。
タイミングの問題だと思うだが、
私が行くといつも「センター」に通される。

センター。それは何人かいる職人さんの中で
将がでんと構えているポジションだ。

女ひとりで気楽にすみっこで寿司をつまみたいなと
思って入るのだが、大将の前はキツい。

両サイドの若い板さんと違って、
渋くて貫禄充分の大将は、私の真ん前にポジションを取り、
私がメニューを眺めるあいだ、注文せずにのんびりビールを
食らってるあいだ、食べてるあいだ、


ほとんどその場所から動かない


アゴをあげれば確実に目が合ってしまう。
できれば目線と立ち位置をずらしてくれたほうが
あたし楽ちんなんだけどな…と思うのだが、
きびきび仕事をしつつも軸足は動かず、
ピボットで左右30センチくらいしか移動してくれない(笑)

すいてる時など特に「さあ、あんたのためだけにいつでも
いい仕事するぜ!」っていう全力の職人オーラが漂ってきて
話しかけられなくても「ほっとかれてる感」ゼロである。


プレッシャー!     (ビリー・ジョエル)


大学の学食で相席したくない「ぼっち学生」が増えてる
という記事をネットで読んだが、それくらいは経験しておくべきだろうお前たち。

でないと、大人になってのひとり寿司など到底無理だろう。
ぼっちではあるが「お互いがお互いを気にしていないという
気を使いあう」相席とは、レベルが違うのだ。
向こうはこっちをむちゃくちゃ気にしてるんだぜ!


そんな中、いかにくつろいで好きに振る舞えるか。
そして大将とのOne on Oneをいかに楽しめるか。
大人はその社会勉強をしなければいけないのだ。


ちなみに私が感動し「大将の前で良かった」と思ったのは
今日の旬のネタをどんどん教えてもらえたのもさることながら
「プロのさりげない気づかい」を見れたことである。


最初に握って目の前にぽんと置いてくれた寿司を
箸でつまんで食べ、しばらくして次の寿司が来たとき、
あれ、って思った。

寿司の置き方が、変わったのだ。


寿司の向き




「向きを変えて頂いたんですね、ありがとうございます」
と言ったら、コワモテ大将は照れ臭そうにニコッと笑って
「左ききの方は大変ですよね」と言ってくれた。

長く左ききをやってると、配置された箸の位置をまず逆にするのが
デフォルトで、それに気づくお店の人はほとんどいないのだが、
私が鼻っつらがななめ右を向いた寿司を左からくるりと取ったのを
この人は見逃さなかったんだなと思うとグッとくる。


どセンター大将前も、いいものだね。