ブルース・リーも寅さんも仁義なき戦いも
いったん「好きだ」となると関連映像・文献問わずどんどん読み込んで
深堀りしていくわたくしは、最近の自分の落語ブームのせいで、
落語会のチケット予約ばかりするわまいんちYoutubeで聴いて寝るわで忙しいのですが、
もちろん文献のほうも「落語のことを書いた本はとにかく読みたい」という状態
★広瀬和生の「この落語家を聴け!」
★立川志の輔「古典落語100席」
★「志の輔・宗久 風流らくご問答」
★中野翠「今夜も落語で眠りたい」
★堀井憲一郎「落語の国からのぞいてみれば」
などなど、落語論や指南本を片っ端から読みましたが、
やっぱりいちばんおもしろいのは「落語を演る側の物語」。
先日、タイトルが印象深いせいでずっと気になってた
国分太一主演の「しゃべれども しゃべれども」を借りて観て、
映像もまあ悪くはなかったけど「原作はきっともっと深く面白いに
違いない」と踏んで、さっそく購入しました。
俺は今昔亭三つ葉。当年26。三度のメシより落語が好きで、
噺家になったはいいが、未だ前座よりちょい上の二ツ目。
自慢じゃないが、頑固でめっぽう気が短い。女の気持ちにゃ
とんと疎い。そんな俺に、落語指南を頼む物好きが現われた。
だけどこれが困りもんばっかりで…。
「しゃべりのプロだろ、教えてよ」あがり症の従弟や
口下手の美女から頼られ話し方教室を開くハメになった
若い落語家・三つ葉。いじめにあった小学生やコワモテの
野球解説者までが通ってきて…。
(アマゾンより)
主人公・三つ葉自身の語りで進む物語は
とにかくテンポと歯切れがいい。
「こりゃあ漱石の“坊ちゃん”のトーンをかなり意識してるな」
と最初はくどく思うくらい、ああいう感じだ。
でもそもそも私は「坊ちゃん」が死ぬほど好きなので、
そのテンポで読めるのが楽しいうえに、この作者は
文章がすごくうまいな~と感心しつつ。
好きになる本の特徴として、
「登場人物たちと別れがたいから、終わり近くになると
わざとゆっくり読みたくなる」というのがあるが
この本もまさにそうだった。
ひとりひとりのキャラクターがよく書けていてみんな愛すべき人で、
それぞれが意地を張りつつもとてつもない切なさを抱えている。
語り口はどこまでも歯切れがいいのに、
ひとりひとりはとてももどかしい。
それがよかった。
落語界のはなしを描いているわけではないので、
落語に興味のない人も楽しく読めると思います。
疲れて元気のないひと、自信のないひと、
気持ちがあったかくなりたいひとにおすすめ。
双葉社 (2011-07-14)
売り上げランキング: 3723