「イエス、ユア ハイネス」という返事を使ってみたくてたまらないのですが
そのシチュエーションは私に訪れるでしょうか。
こんにちは広野です。
さて昨今、旅行だヨガだ女子会だと
趣味に自分磨きに忙しい女性は増えてますが
忘れちゃいませんか日本古来の伝統芸能。
ここにもそこにとんと目を向けて来なかった女がひとりおりまして
「おーい八っつぁん」
「なんだい」
……いや
ただ「まくら」ってやつをやってみたかっただけですが
そんなわけで9月にはじめて文楽(人形浄瑠璃)に行って
この記事をあげて
以来(すいません肝心の続篇がまだ未執筆…)、
伝統芸能どんどん行きたい!と思ってる私ですが
私のねえさんこと、ねおさん
が「落語行かない?」と誘ってくれまして
ねおさんの人脈は幅広すぎていつも驚愕なのですが、今回も
「知り合いの噺家さんが出る寄席があるから一緒にどう?」
噺家さんに知り合いがいるって…さすがだ(((゜д゜;)))
(さらにTVで拝見する某師匠とも飲み友だちって…!)
落語は一度行きたい行きたいとずーーーと思いつつ、
いったいいつ誰がどこの寄席で何の話をしてくれるのかが
皆目分からないし連れもいないしで腰が引けており
大好きなクドカンの「タイガー&ドラゴン」を見返す程度。
だから「行くっっっっ!」と飛びつきました。
こないだ文楽デビューした国立劇場のお隣の国立演芸場
私の初寄席となる今回の公演は
六代目三遊亭円楽を襲名したばかりの元・楽太郎さんがいる
「五代目圓楽一門会」でした
昨日は3日間日替わりで行われる公演の最終日でした。
国立劇場の小劇場よりさらにこぢんまりした小ぎれいな空間は
ご年配の方々ばかりで一瞬「あたし浮いてる…?」と不安に。
でも開演が近くなると色々な方々が。
開演前にお弁当を買ってロビーで食べるのも
他の商業演劇を観る時とは違う楽しみがあります。
私はなぜか伝統芸能になると普段いっさい口にしない太巻や
かんぴょう巻、そしておいなりが入った「助六寿司」が食べたくなります。
席は、ねおさんのお知り合いの噺家さんのご好意か
何と最前列ー!寄席デビューとしては最高じゃないですか。
13時から始まった高座、最初はまだとってもお若い前座さんから。
(すいません、名前を失念しました…)修業を始めてまだ3ヶ月という
もうほやほやな新人さん。まだまだちょっと観てるほうもドキドキする 笑
彼はネタを終えると自分で座布団をひっくり返し、
自分で「めくり」をパラッとめくり退場します。
その後の人たちはネタを終えたら退場するだけ。あれっと思ったら
先ほどの前座さんが出てきて座布団を返し、めくりをめくる。
なるほど彼のここでの役目はまだまだ山田くん的なわけだ…と合点。
あいだに漫才やコントをはさみつつ、後になるほど経験豊かな人が出てくるわけで、
その「人が変わるたびにどんどんうまくなってくる」のが楽しい。
「中入り」と呼ばれる休憩時間のふたつ前で座布団が
紫色から銀色ぽいものに変わり、何でだろうと思って後で調べました。
(それは後ほど)
とにかくものすごい至近距離で生の落語を聴いたわけですが、
聴くまでは「オチも決まってる同じネタを違う人がやっても一緒じゃね?」
と思ってたけど全然違うのだとよく分かりました。
文楽の時にも思ったけど、声と最小限の動きだけですべてを演じるので
その人の顔つき、動作、声の高低、声色などなどがダイレクトに影響します。
しかもあれなんですね、噺家さんによってネタもさまざまなアレンジが
されているので、やる人によってもう全然違うんですねこれはきっと。
そしてやっぱり魅了されたのは、彼らの所作。
座布団に座る時の着物の裾のさばき方からおじきから、
最初のトークをしてる時のさりげなく左右に首を振り分ける様子、
いよいよネタに入るときの羽織の脱ぎ方、扇子や手ぬぐいの使い方…。
現代の日常生活においては一切見ることがないそれらの所作が
とても粋で美しく、さらにそれが化粧と装束でよそおってる訳じゃない
素顔の普通な男性たち(しかもnot爺)なもんだから何とも不思議で。
それをいちいち凝視してる上に、最前列なもんで
たびたび壇上の噺家さんが目線をやるとこにぶつかって、
何だかやけに目を使いすぎて目が疲れた 笑
そして「へっつい」「長押(なげし)」「割下水(わりげすい)」
「花巻」「しっぽく」「名題(なだい)」……むーーーん
出てくる出てくる、意味を知らなきゃ全く分からない日本語。
知らなくたって笑えるのですが、何せ芝居と違って
話だけなんだから、確かにある程度の江戸知識がないと
人によっては意味が分からないものもあるかもなあと。
日本語ふぇちな私はいちいちぐっときてましたけどね。
だいたい落語は他の舞台と違って事前に
「この人はこのネタをやります」とチラシに書いてない!
しかも驚いたことに当日になりゃどっかに書いてあるのかと思ったら
次から次へと出てくる噺家さんの名前はめくりに書いてあっても
やるネタが何かは何の紹介もない。
もちろんご本人が「今からこれやります」とも言ってくれない。
(当日その場になって、他の共演者と調整してネタが決まるからなんだろうね)
そうか、だからタイガー&ドラゴンでそば屋の辰っちゃんは
まくらを聴いていちいち「おっ、“品川心中”だねェ!」なんて言ってたのか。
だから私はいまやってるネタの題名は何か全く分からないのでありました。
それでも大変ラッキーなことに、知ってるネタがあったりした!
というわけで以下は私が帰宅後に
話のあらすじやキーワードから検索して調べたものを含めた
演者&ネタ一覧です。感想もつけました。
■前座さん「雑俳」(ざっぱい)
八っつぁんとご隠居が俳句や狂歌を次から次へと大喜利のごとし。
ネタの中に現代の話もたくみに入れるんだなあと初めて知ったです。
まだ「がんばれー♪」と応援したくなる感じ 笑
■三遊亭きつつき(二ツ目) 「時そば」
この方は登場と同時にすごいインパクト…。
よく言えば存在感がでかい、悪く言えばキモおもろい 笑
しかも「寿限無」と並んで私のような落語素人でも知ってる
「時そば」をやってくれてうれしかった!
これ観ると、そばを食べるしぐさがもうシズル感たっぷりで
とってもそばが食いたくなるのですね。
オーバーリアクションで元気でとにかくすごく笑えた。
まだ二ツ目だけど要チェックの噺家さんかも。
■ニックス 漫才
■三遊亭橘也(二ツ目) 「だくだく」
体育会系出身かと思うようなイカツい方 笑
この方は最初のフリートーク的なものがなく、
いきなりまくらから入りました。
貧乏長屋の住人が家財道具を壁に貼った紙に書き、
目の悪い泥棒が本物と間違えて入ってくるというこのネタも
たいへん愉快でアクションが大きく、豪快なイメージのこの方に合ってるなあと。
■三遊亭鳳志(真打) 「棒鱈」
ここで座布団が変わったのは、ここから真打登場だからなんですね。
先ほどの橘也さんとは全く違うたたずまい、何と言うかこう
しっとり落ち着いた語り口の方。でも酔っ払いが上手 笑
江戸っ子ふたりと仲居さん、薩摩の侍、そして侍についた芸者さん、
最後には板場の料理人まで何人もの人間が出てくるネタなのですが
それぞれの演じ分けがとてもうまい!達者な人だなあと。
特に芸者さんが何とも色っぽく、普通の男性なのに女性に見えるのよー。
■三遊亭楽生(真打) 「片棒」
こちらが席を取ってくださった、ねおさんのお知り合いの噺家さんです。
最初のトークもとてもたくみで、会場を一気に自分のペースに
持っていくことができるなあと感心しました。
このネタは鳴り物がやたらと出てくるんだけどそれを全て
口でやらなきゃいけない上にものすごく忙しく、これは経験がないと
とてもできないネタだわと思いました。楽生さんは人情噺もとてもいいと
ねおさんが言ったけど、この「片棒」は底抜けに賑やかでアホウな感じに
演じてらして、もっと色々なネタを観てみたい!と思わせる方でした。
~仲入り~
休憩中にねおさんが楽屋口に連れてってくれたので、ネタが終わったばかりで
汗だくの楽生さんにご挨拶できました。
「ナマ落語家と喋ったー!」とひとり興奮しておりましたわたくし。
■三遊亭兼好(真打) 「猫の皿」
休憩時間直後のこの出番は、お客さんが食べ物を食べていることも多く、
だから「食いつき」というのだそうです。
だから、集中力を欠いてざわざわしている客席を「一気にこちらに
向けることができる、腕のある者がやると決まっております」と言って
どっと笑いを取っていました。
そして私がまくらで「わあっっっ」と飛び上がったのがこのネタ!
「タイガー&ドラゴン」の中でいちばん好きなネタでして、
理由はサゲ(オチ)がいちばんオチらしくて笑えるから。
そのサゲをよく真似していたので、まさかそれを初の寄席でナマで聴けるとは!
この方の最初のトークがとっても長いなあ(すごい楽しかったから良いのだけど)
と思ったのは、この「猫の皿」って他に比べてとても短いネタだからなのね。
念願のサゲを聴けて、満足♪
■コント チャーリーカンパニー
■三遊亭竜楽(真打) 「中村仲蔵」
トリです!
ちょっと僧侶のようなたたずまいのある方で、とても静かに話し始めました。
で、いつまで経ってもあまりドッと笑うところがこないなあと思ったら、
これはいわゆる「人情噺」なのですね。
「猫の皿」に続いて「わあっっっ」と思ったのがこのネタでして、
なぜなら氣志團GIGで出会って意気投合し今では飲み友というかもはや同志的な
ケンタ氏から「志の輔のやる“中村仲蔵”がスゴイ」と聞いてたから。
そうか、これが中村仲蔵というネタなのかー!初の寄席でこれに出会ったのは
これまたラッキーかも!と。
江戸時代中期の歌舞伎役者で名優と称される初代・中村仲蔵のエピソードで
確かに聴いていて(私は)わくわく血がたぎるような内容なのです。
何より仲蔵がこの中で演じる舞台は「仮名手本忠臣蔵」!
ドラマと小説の忠臣蔵しか知らない私は「仮名手本忠臣蔵」の話は
いまいち知らんのですが、たまたま三浦しをんの「仏果を得ず」で
読んでいたせいで、仲蔵が役作りに苦労する「五段目の斧定九郎」を
知っていたのもなんだかラッキー!と。
人情噺なので、最後のほうはハンカチで目をおさえるお客さんもちらほら。
竜楽さんはそこはかとなくインテリジェンスただよう方だなあと思っていたら、
後で調べたところによると何と世界を回って6ヶ国語で落語やってるそうです!
落語行きたいなーと思ってたところにお誘いがあり、
初寄席で最前列で、ナマ落語家さんにもご挨拶できて、
しかも知ってる「時そば」があり、
さらに一度ホンモノを聴きたいと思ってた「猫の皿」があり、
トリにはこれまた大変興味があった「中村仲蔵」があった。
なんてラッキーなことよ!
これはひとえにねおさんのおかげ。
本当にありがとうございました
落語はお値段も安いし、他の伝統芸能に比べて
気軽に出かけていけるのがいいですね。
今後ひとりでもどんどん行こうっと。
さて、次は歌舞伎か!?