本居宣長
詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦ずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要にて、学びやうは、いかやうにてもよかるべく、さのみかかはるまじきこと也。いかほど学びかたよくても、怠てつとめざれば、功はなし。
また人々の才と不才とによりて、其功いたく異なれども、才不才は、生れつきたることなれば、力に及びがたし。されど大抵は、不才なる人といへども、おこたらずつとめだにすれば、それだけの功は有る物也。
また晩学の人もつとめはげめば思ひの外功をなすことあり。また暇のなき人も、思ひの外、いとま多き人よりも功をなすもの也。されば才のともしきや、学ぶことの晩きや、暇のなきやによりて、思ひくづをれて止ることなかれ。とてもかくてもつとめだにすれば出来るものと心得べし。すべて思ひくずをるるは、学問に大にきらふ事ぞかし。
【訳】
私の思うところ、学問というものは長年諦めず怠けずに励んで取り組む事が一番大事だ。勉強方法などどんな風だってよい。それは大した問題ではない。どんなに良い学び方を与えたところで怠けてしまって続かなければ意味がない。
そして人間には才能が秀でている人とそうでない人がいる。彼らの出す成績はだいぶ差が出るが、才能の有る無しは生まれつきなので本人の力だけではどうにもできない。だけど大抵の場合、たとえ才能が無い人でも諦めずに続けていればその分だけの前進が確実にある。
また、晩学の人でも努め励めば思った以上の成果を出す事がある。忙しくて勉強する時間が取れない人が思った以上に成果を出す事だってある。
だから自分に才能が乏しいと感じている人や、もう高齢だからとか仕事が忙しいからという理由で学問を諦めていた人達もあきらめずに学問の道を進んでみてほしい。とにもかくにもやってみれば意外とできるものだと思って欲しい。思い煩って諦める心が実は学問の一番の敵なのだ。