一般質問「地域公共交通について」 | 千葉こうきのブログ

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 今回、2項目について、弘前市議会の一般質問を行いました。その中の「地域公共交通について」の壇上質問部分をご紹介します。地域公共公共交通について、国の政策を示しながら、教科書的ではありますが論じました。
 

1、地域公共交通の独立採算制

 地域公共交通について、国の「第二次交通政策基本計画」は、「我が国では、主として民間事業者により供給される『旅客運送契約の下で運賃を支払えば誰もが利用可能な運送サービス』をもって『公共交通』と呼んでいる」としています。

 こうしたことからも、「非排除原則」から公共財とされる道路と異なり、公共交通は私的財という区別の下、料金徴収が容易という「排除原則」から公益事業とみなされ、「公共の福祉の増進」と同時に「経済性の発揮」が求められることから、「独立採算制」が採用されていると伺っています。

 さらに、競争の促進によっるサービス水準の向上、非効率な事業者の市場からの退出によって、運輸事業を活性化せるため、規制緩和が進られ、2000年に鉄道事業者において、2002年に乗合バスにおいて、退出が許可制から事前届出制に変更されたと伺っています。

 一方、EU(欧州連合)では、道路とその上を走行する自動車と同じように、鉄道線路施設の経営管理とその上を運行する鉄道輸送事業が分離され、ほとんどの諸国ではインフラは、公的所有下にあり、運営費も「不採算であっても、社会的に望ましい」輸送サービスを提供する義務として公的資金による補填を可能にしていると伺っています。

こうした世界の流れの中で、日本の地域公共交通が、市場原理に基づく独立採算制で成り立ってきたことについて、国土交通省鉄道局の2003年報告文書「地方鉄道復活のためのシナリオ」では、「我が国においては大都市圏における人口集中が著しく、世界的には異例なほど鉄道の輸送密度が高い。こうしたことで、我が国においては、大都市圏の都市鉄道においては基本的に民間資本による自立経営が成り立っている」としています。

 こうして、地域公共交通は日本の特殊な交通市場条件の下、都市圏においては、ビジネスとして成り立ち、広く「公共交通はビジネス」との認識も定着してきたものと考えます。

 しかし、実際には、輸送密度が著しく低い地方では経営悪化で苦しみ、路線バスの廃止路線は、2007年度から2020年度にかけ、全国で1万9,444kmにのぼり、地方鉄道の廃止路線も、2000年度から2021年4月1日にかけ、45路線、1,157.9kmとなりました。弘南鉄道においても、平成29年度以降、純損益のマイナスが連続するようになりました。

2、地域公共交通の「公共の福祉の増進」役割

 また、同時に、考えなければならないのは、地域公共交通には、こうした「経済性の発揮」という側面と共に、「移動のための手段」として「公共の福祉の増進」に寄与しなければならないという側面があるということです。

 何よりも「移動の権利」がなければ、日本国憲法の第22条(居住・移転および職業選択の自由)、第25条(生存権)、第13条(幸福追求権)などを十分に実現することができません。まさに、地域公共交通は「移動の権利」を保障することで、広く公共の福祉を増進させる役割を担っていると言えます。

 2013年の衆議院国土交通委員会での交通政策基本法案の質疑おいて、政府は、「移動の権利」を明記しない代わりに、人の移動の確保について、「十分に規定を盛り込んだ」と答弁しおます。

 さらに、法改正に伴い令和5年10月に施行された国の「地域公共交通の活性化及び再生の促進に関する基本方針」は、地域公共交通が果たすべき役割について、次の諸点を上げています。

 一つ目は、「地域公共交通の維持・改善により文化活動やコミュニティ活動、遊びのための活動、その他様々な活動のための外出を容易にする」とし、文化を育み、豊かな社会を築き上げる役割を上げています。

 二つ目に、「経済振興や健康・医療、福祉・介護、教育、環境等の他の行政分野における公的負担額を間接的に軽減しているクロスセクター効果がある」と、財税支出に対する効果を上げてます。

 三っ目に、「コミュニティの形成に当たって不可欠な地域の共有財産」「将来の都市構造の構築に向けたまちづくりにおいても重要」と、まちづくの土台となることを上げています。

こうした地域公共交通について、「地域の目指すべき将来像を実現するために必要な公共財・社会インフラとしての側面を有するものであり、これに対する支援は、民間事業に対する支援にとどまらず、地域社会に対する支援という側面がある」としています。

 さらに、地域公共交通は、現に乗車した者だけではなく、広く受益者が存在し、それを排除できないという意味では、公共財に近いということであり、国土交通省近畿運輸局の文書においても、地域公共交通への補助は、「赤字」補填では無く、『地域を支えるための支出』としています。当市の地域公共交通への補助も同様ではないでしょうか。

3、させ迫る「交通崩壊」の危機

 ところが、公共交通は、公共財に近いとされるものの、依然として「ビジネス」とされ、少子化等で日本の特殊な交通市場条件が崩れ、コロナ感染拡大の影響も加わり、地域公共交通の存続が一層厳しくなっています。

 その状況について、「第二次交通政策基本計画」は、「交通事業が独立採算制を前提として存続することはこれまでにも増して困難となっており、このままでは、あらゆる地域において、路線の廃止・撤退が雪崩を打つ『交通崩壊』が起きかねない」とし、こうした危機を乗り越えるため、「持続可能な開発目標(SDGs)」にもふれながら、「誰もが、より快適で容易に移動できる、生活に不可欠な交通」、モビリティの維持・確保が必要だとしています。

 問題は、「交通崩壊」の危機迫る中、モビリティの維持・確保へ、いったい誰が主体となって推し進めるのかということです。

この点について、「地域公共交通の活性化及び再生の促進に関する基本方針」は、「公共交通活性化再生法」の第四条3項に沿い、「全ての地方公共団体において、地域旅客運送(うんそう)サービスの持続可能な提供の確保に努め、その実現に向けて地域公共交通の活性化及び再生を図る」とし、地域公共交通の整備は基本的には地方自治体の責務としています。

 当市においても、「弘前市地域公共交通計画」の作成作業がすすんでおり、市が先頭に立って、モビリティの維持・確保に向け、地域公共交通の再生・活性化に挑むわけですから、その責務は極めて重大と考えます。

 そのためには、その責務に相応しいだけの財源が必要です。この点について、「第二次交通政策基本計画」では、「地域公共交通の維持確保に必要な財源のあり方について、国・地方の厳しい財政状況も踏まえつつ、検討を行う」としていますが、検討された形跡は何処にも見当たりません。さらに、国は、依然として、規制緩和政策や交通経営の独立採算制原則を放棄していません。令和3年8月、「地方の鉄道ネットワークを守る緊急提言」で、県知事有志が、鉄道の廃止を促進した鉄道事業法の規定修正を要求しているにも関わらず依然としてそのまま。

 今、必要なのは「交通崩壊」の危機迫る中でも、基本的に調整者の域を出ない国の姿勢を変える事ではないでしょうか。

4、国が財政的な基盤を確保するシステムを

 こうした中で、令和4年2月、全国市議会議長会も「地域公共交通の維持・確保問題に関する要望・提言」を政府及び国会に提示。その中で、特別交付税措置の拡充、事業者に対する支援措置の拡充、地域公共交通確保維持改善事業の拡充強化等を要請しています。今こそ、全国市議会議長会のこの「要望・提言」に固く団結し、国に強く求めていく時ではないでしょうか。

 特に、青森県は、秋田、岩手と並び、人口減少率が最も高い上位3県の中の一つ。一方、東京都は常に特殊出生率が最下位にも関わらず、ストロー効果も働き、この先も人口増の一人勝ちの予測。このような地域間格差を拡大させてきたのは、なによりも、地方に衰退と疲弊をもたらしてきた国の都市政策にこそ責任があります。であるならば、国が、全国の地域公共交通の再生・活性化に責任を持ち、財政的な基盤を確保するシステムを作るべきではないでしょうか。

 日本共産党は、国の責任で「公共交通基金」を創設し、JRの地方路線、地方民鉄やバス等の公共交通を支援することを提案しています。そして、その財源については、ガソリン税をはじめ自動車関連税、航空関連税などの一部を充てるとともに、新幹線や大都市部などでの利益の一部を地方の公共交通維持に還流させ、交通の面でも生じている大都市と地方の大きな格差と不均衡を是正するとしています。このことをご紹介させていただいて、質問に移らせていただきます。

 

 一つ目は、市民の移動する権利、移動権に対する当市のお考えをお聞かせください。

 二つ目は、当市の地域公共交通の状況についての認識をお答え下さい。

 三つ目は、現在作成中の「弘前市地域公共交通計画」の概要についてお答え下さい。今日の市役所の中庭。急に雪が激しくなってきました。