東寺では毎月第1日曜日に「がらくた市」(骨董などの露店)が境内で開催されています。

 

 週末より両親が京都に来ていたので、正月に引き続き「がらくた市」に行ってきました。

 

 僕のお目当ては、クリスタルの切子の冷酒器でした。

 

 今回も9時ごろから約2時間、会場を二回りして持ち帰ったのは、結局包丁とデミタスカップとなりました。(変わり映えせずです。)

 

 デミタスカップは民芸モダン的な感じがピンと来ました。(五百円也)

 

 包丁は無造作に木箱に投げ入れてられていた10本ほどの中から拾い上げました。

 

 10本あっても、「共口金(一体口金)」と言われる刃と口金が一体になっている構造のもの、かつ鋼がハンドルの後端(柄尻)まで通っている「本通し」となっているものは、3本だけでした。

 

 その3本の中で腐食が少なく、刃に良い鋼材を使っているものを持ち帰りました。(千円也)

 

 

 刃渡りは170㎜。刃体の幅はスリムですが、刃先のカーブが直線的ですので、牛刀ではなく三徳包丁だと思います。

 

 

 

「源祐之」作と彫ってあります。詳細は不明です。おそらくOEMで作らせたものに銘を入れただけではないかと思います。

 

 別ブランドで同型の包丁は流通しているようなので・・・。

 

 

 この包丁のポイントは「FORGING STEEL PMハイス」の部分です。

 

 ステンレス系の材質の中では最強の(最も硬度の高い)「粉末ハイス」と言われる系統の鋼を、やわらかいステンレスで両面からサンドイッチした割込み構造のものだと思います。

 

 「粉末ハイス」のメリットは、刃先が硬いので「切れ味が長持ちする」こととステンレス系なので「さびにくい」ことです。

 

 デメリットは、メリットの反対で「研ぎの手間がかかる」ことです。

 

 「粉末ハイス」包丁はとにかく「硬すぎて研げない」などと言われることが多く、僕は今まで敬遠していました。

 

 が、露店のおじさんが木箱の洋包丁は「どれでも千円や。」とおっしゃるので、「千円やったら研ぎの練習代としても安いなぁ・・・。」ということで、東寺の境内からうちへお引越しとなりました。

 

 ちなみに「粉末ハイス」鋼の包丁はホームセンターでは取り扱いがなく、通常は刃物の専門店でしか入手できません。ブランドにもよりますが新品でしたら3万円程度、中古でも手入れがされていれば1万円はくだらないようなものです。

 

 

 現状は刃先は全くなまっていて新聞紙も切れません。

 

 以前の持ち主が何かで研ごうとした傷がついていますが、最終的に断念したような感じです。

 

 

 裏側も同様です。こちらは少し黒いさびも見られます。野菜の「アク」もこびりついています。

 

 いい包丁のはずなのに、少しかわいそうな感じの使われ方でした。

 

 ただ、刃の「欠け」がないのはラッキーでした。硬い鋼は欠けると修復するために大層研がなければなりませんので・・・。

 

 まずは粉末クレンザーと不織布スポンジで刃の表面や柄を磨いて汚れを落とします。

 

 そのあと、砥石で研いでいきます。

 

 

 今回使った砥石は5種類です。

 

 まず一番手前の「鎌砥石」(両面タイプ)の240番と1000番で刃体(側面)を削って傷を消しました。

 

 そのあと「刃の黒幕」というシリーズの人造砥石のブルー(320番)で返りを出して、オレンジ(1000番)・メロン(2000番)・グレープ(5000番)で仕上げました。

 

 

 「粉末ハイス」の包丁なので、研ぎづらいのは覚悟していましたが、320番で表・裏と2セット研ぐと返りが出たので、全然普通でした。

 

 「刃の黒幕」が切削力の強いタイプの砥石だったからかもしれません。 
 

 

 裏面の黒さびは取り切れませんでしたが、他はおおむね小一時間ほどで再生できました。

 

 まだ紙しか切っていませんが、力を入れずとも自重でスムーズに切れるようになりました。

 

 

 さっそく研げた包丁を眺めながらコーヒータイム・・・ではなかった。

 

 包丁は仕舞ってチョコレートでコーヒータイムとしました。

 

 
 デミタスカップもちょっとかわいらしいでしょ。
 
 だいぶ包丁研ぎも勝手がわかってきました。
 
2024.2.4