2024年1月7日の京都東寺ガラクタ市で目に留まったものの一つがこの包丁です。
刃渡り210㎜の包丁です。\2,000-でお持ち帰りしました。
「牛刀」(ぎゅうとう)という形の洋包丁で、家庭で一番よくつかわれる「三徳包丁」よりも刃幅が狭く(細い)、刃線が反っている(まっすぐでなく曲がっている)、切っ先(包丁の先端)が尖っている形をしています。
「牛刀」はご家庭よりも業務用の調理で使われることが多いのですが、その場合はこれよりも長い240㎜以上が主となりますので、この210㎜というのはご家庭の料理好きの方などを主なターゲットとしている商品なのかもしれません。
刻印よりメーカーは「ミソノ刃物」材質は「スウェーデン鋼」、「鍛造」の手法で製造されたものと分かります。
ミソノは刃物の産地として有名な岐阜県関市の刃物メーカーで、業務用の包丁としては国内のシェアはトップと言われています。料理人からは絶大な信頼が寄せられています。
スウェーデン鋼にはいろいろな種類があり、ステンレス鋼(錆びにくい)もあれば炭素鋼(錆びやすい)もありますが、もとになる鉄の強度に悪影響を与える不純物(リン<P>、硫黄<S>)が極めて少ない良質な鋼(はがね)です。
現在のミソノの包丁ラインナップでは「スウェーデン鋼」のシリーズは廃止となっており「EU カーボン鋼」に引き継がれているそうです。ヨーロッパの鉄鋼メーカーの再編の影響なのかもしれません。
この「スウェーデン鋼」シリーズはステンレスではなく、炭素鋼の鋼になりますので、より慎重な手入れを必要とするタイプです。
日本でいうと旧 日立金属安来製作所(現在は プロテリアル安来製作所)の「安来鋼」(やすきはがね)が有名ですが、それのスウェーデン版です。
鍛造とは鋼をたたいて鍛えることを言いますが、この「特別」鍛造の「特別」というのは何かと思いミソノのホームページを見ますと、どうやら職人さんがハンマーで手打ちしているもののようです。
一般の洋包丁は、利器材と呼ばれる鉄板をプレスで包丁の形に打ち抜いて、それに柄を付けて研いで刃をつけるというのが一般的です。
それに対してこのスウェーデン鋼シリーズは和包丁のように鋼をたたいて包丁の原形を作っていく大変に手間のかかる工程で製造しているということになります。販売価格が高価になるのも納得です。
がらくた市で仕入れたものですので、ところどころ赤錆がういたり、黒錆が侵食したりしています。
拡大すると口金(鍔)部分に赤錆が浮いていますが、軽症のようです。
裏側も同様のようですが、こちらの刃先は表に比べてあまり研がれていないようです。以前の持ち主が表面をメインに研ぐ片刃気味に研いでいたのでしょうか。
刻印は数字の「321」とあります。モデルナンバーでしょうか。
柄の後端まで鋼が通っています。水分が浸透して錆が発生し、隙間ができているということはなさそうです。
反対側も後端まで鋼が通っています。いわゆる「本通し」というタイプで、重量バランスに優れる高級仕様です。
刃の厚みと形状を見てみます。
刃幅の峰に近い部分から刃先に向かって全域が研ぎぬかれています。
「ミソノは切れ味がよい」と言われる一つの理由はこの断面形状にあるのかもしれません。
さていよいよ、がらくた市の中古包丁を再生します。
用意したものは、粉末のクレンザー・シャンパンのコルク・鎌用の両面砥石・名倉砥石・青砥石です。
作業途中の写真はありませんが、結局使用したものは写真の粉末クレンザー・コルク・鎌砥石と、写真にはありませんが、不織布スポンジ・電動リューターセット・包丁用の両面砥石(1000番・6000番)でした。
赤錆や汚れは粉末クレンザーでこすればだいたい取れましたが、黒錆は少し深く浸孔していたため電動リューターで削りました。
時間を忘れて磨きたいところを押さえてほどほどのところで一旦刃を研いで仕上げます。
一応薄汚れた感じは無くなりましたので、この辺で完了です。あとは使いながらきれいにします。
古新聞はスッと軽く切れ、鶏肉の皮にもかかりよく切れ込みましたので、まずまず使えるようになりました。鋼の包丁らしい切れ味です。
包丁スタンドに刺している三徳包丁と入れ替えてしばらく使ってみたいです。
2024.1.7