新しい家のオーナーのお爺さんと
会った私達。。。
とても偏屈なお爺さんなのが
気になりつつ
妙な展開にちょっと引き気味の私。
しかも話しが違う・・・。
2年の契約が必要・・・。
1年の縛りなら。。。
何かあった時に
すぐに引っ越せるが
2年・・・
大丈夫なんだろうか・・・。
そんなことを思いつつ
とりあえず契約書を
作ってもらうお願いをする。
それを見ない事には
始まらない。。。
私達はまた会う事を約束し
帰る事にした。
帰りの車の中
運転していた夫は
「あの類いの人は
必ず問題を起こす。
あの疑い深さや
ものの考え方は
難しいかもしれない。」
そう言い始める。
夫と同じように感じていた私は
夫の言葉に頷いた。。
問題は山積みな家なんだけど
いい家。。。
ここは私達の家になる。。。
そんな気持ちは変わらないものの
過去の経験から
家のオーナーが変な人だと
何かが起こった時に
解決できない。
ここはあきらめるしかないな・・・
二人とも
口は閉ざしていたものの
意見は同じだった。
ここは諦めた方が身のため。
危険な匂いがしすぎる。。。
もう、時間がない。
アパートに引っ越そう・・・。
そんな事を
考えつつ
家族で買い物をしていた。
そして4時間ほど発った頃
夫が
「あの家は落ち着くまで
きっと苦労するけど
でも、その価値がある家かもしれないよね。
ここにいる間ぐらいしか
あんなに大きな家には住めないし
何処でも気に入る訳ではない僕たちが
両方気に入ったんだから
あそこに住もう。」
そう言い出した。
私は
賛成な部分が半分
賛成でない部分が半分だった。
家は好きだ。
これ以上の条件の所を探し当てるのは
今の所無理だ。
特にあと1週間なんて
無理・・・
だからあそこに決めた方がいい。
でも、何か起こった時に
処理をするのは全て私だ。
あんな感じのオーナーじゃあ。。
不安で仕方がない。
この私の気持ちを察した夫は
「あの家でトラブルになりそうな所は
オーナーに頼らないで
自分たちで何とかしよう。
冷蔵庫も買おう。
ガスレンジも買おう。
できる事はやって
自分たちが快適に暮らせるように
整えよう。
貸家だから
ここまでする必要ないけど
ヒロが妙なストレスから解放されて
快適に暮らせるなら
それくらいのお金は使う価値があるよ。」
と・・・
夫は本当に良くできた夫だ。
世の中には五万といい夫がいるのだろうし
その人達と比べれば
きっと随分劣る所は沢山あるのだろう。
でも、他の人と比べてどうとかではなく。。。
私にとって
「この人が一番だ」と思える選択を
夫は常にしてくれる。
一般的にはたいしたことなくても
私にとって一番。
これがこの人と結婚した理由なのだと
常に思い知らされる。
ここで二人の気持ちが固まった。
ここに住む。
ここを快適空間に整える!
そう心に誓った。
そして、数日後
私達は契約書をもらう。
その契約の中には・・・
ある大切なものが入ってなかった。
それは「ディプロマティック クローズ」。
簡単に説明すると
こちらの意思ではない理由で
帰らなければいけない事情ができた時
契約を途中で破棄できるというもの。
ここは中東だ。
そう言うことが多々起きる。
戦争や
理不尽な解雇
などの理由で
この国に入れなくなることが
多いのだ。
通常、2年の契約前に家を出なければいけない場合は
契約違約金が発生する。
その金額は
契約期間中の家賃全額。
1年住んで残りの
1年で契約を破れば(引っ越しすれば)
この家主に対して
丸1年の家賃を払わないと
この家を出れない。
また、この国は
この契約を破れば
私達を国から出られないような
縛りをかけらけれる。
トラべルバン。
以前夫の部下が
この賃貸契約を破り勝手に引っ越した事で
家主がこの男に
トラベルバンをかけて
彼を国から出られないようにした。
家族に会いにいくのに
空港で足止めされ
国を出れなくて
解決するまでかなりの時間を要し
ものすごいお金を払って
和解をしたのを覚えている私達は
ここの部分は
ものすごく大切なのだと知っているのだ。
ここは譲れない。
この国の家の契約には
殆どこのデプロマティッククローズが
盛り込まれている。。。
それは、この国では
本人の意思とは別に
この国にいられなくなる事が
多々起こるからなのだ。
今回、初めてこれが盛り込まれてない事に
夫と私はものすごい不安を感じた。
そのまま私達は
次の日にこの家のオーナーに会いに行った。
この家主に
私達は
このでヒプロマティッククローズは
必要なんだと説明したら・・・
「いや、ここは私も譲れない。
2年の契約前に帰る事になれば困る。
途中解約はさせられない。」と
よくわからない事を言い始める。
もちろん、途中で解約なんてしない。
ただ、何か自分たちに
起こった時
例えば
夫が交通事故で死んでしまった時。。
私達はここにいられない。
そんな時に多額の金を払って
この家を解約してから
この国を出なければいけないなんて
考えただけでも
ゾッとする。
最悪この国からは出れない。
その事を何度説明しても
聞く耳を持たないオーナー。
せっかく決意したのに
これだけは
譲れない契約内容。。。
家の中のメンテナンスはするけど
古いものは買い替えず
汚いまま渡し
後は好き勝手していいけど
契約期間だけは
何があろうと守ってもらう。。
何もしないけど
権利は主張しているように見えた私は
絶望した。
正直当時は史上最悪のオーナーだと思った。
話し合いが半ば決裂した形で
終わり・・・
もう一度契約書を書き直すことで
とりあえずその日は終了。
全然、前に進まない。。
他を探した方がいい。
そんな気持ちになり始めた頃
2回目の契約書が
できたと言う知らせが舞い込んでくるのであった。