25年8月に読んだ本 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

8月は全く低調、6冊のみでした。


◆ブレイクショットの軌跡(逢坂 冬馬)
「同士少女よ、敵を撃て」的な話を想像していたので、ちょっと逢坂さんらしくないような。ブレイクショットって車の名前なのね。この車がいろいろな所有者の手に渡り、最期はアフリカで武装されて紛争に使われる。期間工、投資会社経営者、板金工、そしてアフリカの少年兵、全量であることを貫く主人公を通じて現代社会の闇が描かれるという話なんだけど、ちょっと盛り込み過ぎ?

◆ゲーテはすべてを言った(鈴木 結生)
いやー、芥川賞っぽい、なんともアカデミックな作品でした。

”Love does not confuse everything, but mixes. ” ふとしたきっかけでこの言葉を目にしたゲーテ研究家の統一が、これが本当にゲーテの引用かを追求する。一方で娘の徳歌は父と全く違うアプローチで、やがて一つの事実にたどり着く。創作とは、盗作・捏造とはなにか。オチを含めて、結構深い作品でした。

◆ドヴォルザークに染まるころ(町田そのこ)
九州の過疎地帯の田舎町の小学校の廃校、その最後のイベントに集まった地元出身の女性たちの群像劇。地元にとどまった人あり、都会に出て行った人あり、それぞれの、クローズドサークルの中の恋愛劇。一行目から引き込まれました。うまい。

◆飽くなき地景(荻堂 顕)
芸術家肌の祖父の薫陶を受けた烏丸治道は、倫理観の欠如した根っからの土建屋での父や腹違いの兄と全くそりが合わない。図らずも父の会社で働くこととなった治道の目標は祖父のコレクションの日本刀を収納するミュージアムを作ること。ところが祖父が家宝と定めた刀は贋作だった。戦後の混乱から高度成長期を経てバブル前夜に至る壮大な物語

◆青年 (森 鴎外)
文学を志すぽっと出の青年が、都会での生活に戸惑いながら、それでもラッキーなことにふとしたことで知り合った妖艶な未亡人と肉体関係を持ち、それに何とか自分なりの理屈をつけようと、あれやこれやと考えをこねくり回す。要はもう一度やりたいだけなのだが。面倒くさい奴だなーと思いながらも、箱根まで駆け付けてしまうその行動力は若さ故か。

意気地なしの青年が、岡本のような両面での成功者に成長してくれることを願ってやみません。

◆財布は踊る (原田 ひ香)
新潮文庫の100冊、今年の1冊目。お金のない人のリアルな物語、気軽に楽しく読みました。