25年4月に読んだ本 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

4月は11冊、あまり読めなかった。

 

久々に面白い歴史小説を2冊読みました。

◆秘色(ひそく)の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚(木下昌輝)
デビュー作の「宇喜多の捨て嫁」以来の傑作と思う。直木賞は、うーん、残念でした。

歴史小説って史実とフィクションの匙加減が、難しくって、やり過ぎるとトンデモ小説になってしまうのだが、ギリギリ良い塩梅のエンタメ小説に仕上がっている。士農工商、商業を蔑視する武士階級が商人による倫理無き貨幣経済になすすべなく凋落していく。勧善懲悪ベースの悪徳商人、頑迷な高級武士vs改革派の図式が小気味よい。
 

◆海を破る者(今村 翔吾)

弘安の役で活躍した伊予水軍の将、河野通有が主人公。元寇って、教科書なんかじゃ台風が来て元の船団が壊滅したってさらっと書いてあって「神風」のイメージが強いけど、実際はまさに国難、武士団の奮戦によって国が守られたんだってことがよくわかる。面白かった。
 

◆藍を継ぐ海(伊与原 新)

第172回直木賞受賞作。著者の作品は理系ネタが多いのだが、今回のは「星落つ駅逓」を除いて理系色やや薄目。どれも甲乙つけがたく読みやすい良い話。納得の直木賞。

 

◆小説(野崎 まど)
本屋大賞ノミネート作品は全部読むことにしているので。序盤は面白く読んでたんだけど、だんだん話が現実離れしていって、、、著者の意気込みは分かるけど、好みの別れる作品かも。
 

◆水車小屋のネネ(津村 記久子)
昨年の本屋大賞2位作品。毒親の元から逃げ出した姉妹が、水車小屋に住むヨウムのネネと共に歩んだ三十年を描く。雇い主のそば屋さんの夫婦や学校の先生に支えられながら、やがて自らも訳ありの若い人の支えになっていく、ほのぼのした物語。楽しく読ませていただきました。

◆さよなら妖精(米澤 穂信)
日本の田舎町に現れたユーゴスラビアの少女・マーやは母国で政治家を目指しているという。

今は亡きユーゴスラビア、冒頭から内戦の暗い影が付きまとう。宗教的、民族的な対立と認識していたが、経済的な理由が大きかったみたいで、「南のスラブ人」の人工国家は指導者チトーの死で結束が緩んでしまった。統一国家の夢の前に散った少女と、その少女に対し、あくまで傍観者にしかなれない日本の青年の淡い思い。守屋くんがどんな大人になって、この問題とどう向き合うのか、米澤さんらしくない?重ための話でした。
 

◆皇后は闘うことにした(林 真理子)
タイトルが気になって手に取った。ほんの100年ほど前まで、高貴な方々はこんなことをやっていたのだなというのが率直な感想。

今は大正天皇の時以来の皇統継続の危機、愛子さま、佳子さまを直宮として残すよう法律を改正しないとすべての重荷が悠仁さまお一人にかかり、生物学的な偶然に日本の皇統の歴史を委ねることになってしまう。当時と違って、すべての責任は政治家にある。しっかりしていただかないと。
 

◆少女には向かない完全犯罪(方丈 貴恵)
方丈さんといえば特殊設定ミステリですが、今回のは幽霊という特殊設定に加え多重解決もの。殺人方法も毒入りチョコレートであのバークリーの「毒入りチョコレート事件」を思わせます。前評判が高かったので期待して手に取ったのですが、語り部の黒羽を含め全員怪しい、ややこしくて個人的にはあまり好きじゃなかったかな。次作は「孤島の来訪者」みたいなやつ、期待します。
 

◆薬屋のひとりごと 1・2・3 (日向夏)
絶賛アニメ放映中の「薬屋のひとりごと」、銀座松屋で開催中の展示会も観てきました。

第一・二巻はアニメ第一期、第三巻がアニメ二期の前半部分ですね。

薬学の知識を駆使して後宮の謎を解き明かしていく猫猫の活躍、自身や壬氏様の出生や素性のあれこれも徐々に明らかになり、物語は佳境に。改めてアニメが原作に忠実なこと確認しました。原作も悪くないけど、やはりアニメの出来が素晴らしい。

それにしても猫猫が上級妃たちにどんな閨の講義をしたのか、知りたいっ!