「あなたが誰かを殺した」(東野圭吾) 切れ味鋭い推理、シリーズ最新作は王道のミステリー | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

私が誰かを殺した

 

前作で終わったと思っていた加賀恭一郎シリーズ、しかも「このミス」など年末のミステリー本でこう評価と軒並み高評価ときては読まずにいられない。図書館本だと半年くらい待ちそうなので購入して一気読みしました。

 

閑静な別荘地で開催された恒例のBBQパーティ、参加したのは別荘のご近所さん同士の四家族12名とお手伝い係で連れてこられた一家3名の計15人。四家族はいずれも社会的な地位が高くてお金持ちそう、それぞれ皆腹に一物を持っていそうな面々です。

その夜、参加者そのうち6人が次々と刺され5人が死亡するという惨劇が起きます。犯人はその日のうちに自首、犯人は被害者たちとの面識なし、ただ人を殺して死刑になりたかったと供述するも、犯行の詳細については黙秘を続けます。

一向に進まない捜査に業を煮やした遺族たちは、別荘近くのホテルで真実を知るための検証会を開きます。夫を殺された鷲尾春那は、検証会に臨むにあたり、職場の先輩の知人の刑事・加賀恭一郎にオブザーバー参加を依頼するという展開。

 

検証会が始まる直前に、春那の元には「あなたが誰かを殺した」と記された匿名の手紙が届いていました。これは、クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」みたいに、参加者が過去に罪に問われない罪を犯していたというような展開になるのか、そんな推測をしながが読み進めていきます。

 

いよいよ、事件関係者に加賀と地元警察の刑事課長を加え検証会が始まります。

地元の警察も、関係者も、無差別殺人、行きずりの犯行と信じ込んでいる中、慧眼の加賀が現場検証を経て事件の矛盾点をつき、鮮やかに隠されていた秘密あぶり出していきます。

やがて数多くの秘密の向こう側に、ようやく事件の真相が見えてくるのですが、、、

 

今回の作品は、前作のようなヒューマンドラマっぽい要素は薄く、加賀恭一郎シリーズというよりもシンプルに王道なミステリー。加賀は刑事ではなく探偵役です。表面はよくてもどの家族も人知れぬ秘密を抱えている、それを暴き出す加賀の切れ味鋭い推理が読みどころです。

ミステリーとしての完成度もさることながら、かなり複雑な話なのに、東野さんの小説って読みやすいんですよねー。そして途中でやめられない、気が付くとお話に引き込まれていて、結局一気読みしてしまう。

 

新年早々、よい、ミステリーを読むことができました。満足の一冊でした。