相変わらず読書量は低調で、8月は10冊でした。
でも、読まなきゃと思っていた直木賞受賞作の「極楽征夷大将軍」を読めたので、まあ、良しとします。
これと、新書の「世界インフレの謎」はなかなかに面白かった。
◆極楽征夷大将軍(垣根 涼介)
直木賞、おめでとうございます。
垣根さんの歴史小説は「光秀の定理」「信長の原理」「室町無頼」に続いて4冊目。前3作同様外連味たっぷりの作品かなと思ったら、意外にも司馬遼太郎みたいな正統派歴史小説。それも2段組み500ページ超の大作。足利尊氏ってあまり人気のある人物ではないので、彼の一生をここまで書き込んだ小説って初めてなのでは。極楽とんぼで天衣無縫、諸悪の根源とも思える尊氏、対象いぇきな堅物の弟・直義、無自覚な我欲の塊・後醍醐天皇もキャラ立ちしていて、面白く読ませていただきました。
◆この世の喜びよ(井戸川 射子)
芥川賞を受賞した表題作と短編が2編。いずれもストーリー自体に何の盛り上がりがあるわけではなく、心象風景の描写が特徴ある文体で続く。なるほど心が喜ぶということはこういうことかと、共感するかしないかは別にして、芥川賞だなとは思いました。
◆骨灰(冲方 丁)
うーん、冲方さんがホラーとは!祟られてしまった光弘の視点で進むストーリーは何かおかしくて、真実がさっぱり見えてこない。面白かったけど、直木賞は残念でした。宮下公園も渋谷川も、工事が終わってすっかりきれいになりましたね。
◆君のクイズ(小川 哲)
私もクイズ好きなので、いやー、面白かったです。三島くん、そしてそのお友達、クイズ道ですよね。その道を究める?美学?日本人っぽいというか、なんというか。対する本庄絆さんのしたたかさというか、ほとんどクイズ番組でしかお見掛けしないタレントさんは、日々こんなことを考えているのかな。
各社文庫本フェア、完読を目標に頑張ろうとは思っているのですが💦
◆犯人は僕だけが知っている (松村 涼哉)
著者の本は3冊目、いずれも角川メディアワークス文庫、貧困やヤングケアラーというった要素満載の社会派学園ミステリーと言ったらよいのでしょうか。前回読んだ「監獄に生きる君たちへ」がすごく面白かったんだけど、それに比べると登場人物のキャラがちょっと腑に落ちなかったかなー。
◆Another 2001(上) (綾辻 行人)
あの「Another」の続編、というか、二番煎じ?またも災厄が始まってしまった。今度もバタバタ人が死ぬのだろうなーと思いつつ読み進める。あれ、今回は意外におとなしめ?と思わせておいてやっぱり最後で来ましたなー。感想は下巻を読み終わってから。
◆狐笛のかなた (上橋 菜穂子)
上橋菜穂子先生のボーイ・ミーツ・ガール的な単品ファンタジー。「聞き耳」の才を持つ身寄りのない少女・小夜、彼女に怪我をしているところを掬われた霊狐・野火、御屋敷に監禁されている訳あり風の少年・小春丸、この3人の12歳ころとその5年後くらいの、愛と友情のハートフル・ストーリー、かな?
◆常設展示室 (原田 マハ)
心温まる短編集。確かに、美術館に足を運ぶのって○○展をお目当てに行くので、常設展示はあまり気に留めないですよね。所蔵してても展示されていないことが多いし。原田さんお得意の、しかも常設展示されている作品を題材にした美術ネタ、ネットで作品を眺めながら読みました。
◆幽世の薬剤師 (紺野 天龍)
今年の「新潮文庫の100冊」より。紺野さんの作品は「神薙虚無最後の事件」に次いで2冊目だけど、ずいぶん印象が違った。これもミステリーといえばミステリーだけど、紺野さん、ラノベっぽいのも書くんですね。面白く読ませていただきました。
◆世界インフレの謎 (渡辺 努)(講談社現代新書)
実にわかりやすい解説書でした。95~99年まで香港に住んでいましたが、当時はアジアにいる日本人はお大臣気分を味わえました。それが、この四半世紀の凋落です。ゆでカエルというか、緩慢な死というか、それがこの数年は坂道を転げ落ちるスピードが加速している感がありましたが、やっぱりね。パンデミックの人的被害は極めて軽微だった日本、にもかかわらず何でこんなことになってしまったのか、一々腑に落ちました。