越野柊一は大学時代の友達や従兄6名と物見遊山気分の探検で、すでに廃墟となっていた山奥の地下施設を訪れた。偶然出会った三人家族とともにそこで夜を越すことになったが、翌日の明け方に発生した地震で扉が岩でふさがれ、閉じ込められてしまった。さらに地下水が流入しはじめ、一週間ほどで施設は水没してしまう。
タイムリミット付きのクローズドサークル、そんな中で殺人事件が発生する。犯人は閉じ込められた9人のうちの誰かだ。
扉を塞いだ岩にはワイヤーが括り付けられており、中からの操作で動かせるが、その人は閉じ込められたまま、犠牲になる。
殺人事件の犯人が犠牲となって残りの人を脱出させるべきということで意見は一致、そのためにはタイムリミットまでに殺人犯を見つけなければならない。
なるほど、「ノアの方舟」の逆バージョン、洪水に沈む方舟からいかに脱出するか、って話です。
昨年度の「文春ミステリー」1位、「本格ミステリ」2位、「このミステリーがすごい! 」 4位、「ミステリが読みたい!」6位、ミステリーとして軒並み高い評価を受けただけでなく、「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2022」7位、今年の本屋大賞でも7位と、小説としても評価を受けている作品で、かなりの期待をもって読み始めました。
犯人をなかなか絞りこめずじりじりと時間が過ぎていく前半、そんな中で第二、第三の犠牲者が出てしまう。
最初の犠牲者は今回の探検の発起人だったので、まあ、そのペナルティで殺されるのもわからないでもないですが、誰か1名が犠牲にならなければならない状況で、その候補者を減らす結果となる殺人事件が進行していくのは何とも不可解。
越野柊一が語り部のワトソン役で、頭の切れるその従兄の翔一郎がホームズ役、その彼が消去法で犯人を絞っていき、ついに追い詰め、犯行を自供させる。
凄惨な連続殺人事件にしては今一つ動機が弱いような気もしたのですが、やはりそのままでは終わらない。最後に用意されていたどんでん返しがまた強烈。
期待は裏切られませんでした。本格ミステリとしてよくできているし、また小説として読んでも面白い。
それにしてもこの犯人、地震で閉じ込められたのはあくまで不慮の事態、にもかかわらず瞬時にここまで考えて行動していたとは、、すごすぎて伏線にも全く気が付きませんでした。
お勧めです!