「映画を早送りで観る人たち」 映画はもはや鑑賞ではなく消費するもの、Z世代の驚愕の視聴方法 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

映画を早送りで観る人たち

 

私もTVドラマやアニメを片っ端から録画し、早送りで観て継続視聴をする作品を決める。面白くないと思ったものは2,3話で切る。小説も、読み終わった後で、自分の解釈が正しいか、見落としはないか、ネタバレサイト等で確認する。

それゆえに、タイトルを見て「これは自分のことだ」と思って手に取った本であるが、今どきの若い人たちの視聴方法は、私の想像を大きく超えるものだった。

 

同調圧力が強いZ世代にとって、話題の映画や動画を視聴する目的は、友人との話題についていくための手段にすぎない。そのためには、作品を鑑賞する必要はない。内容さえわかればいいので、細かい所は自分でハナから理解することを放棄してオタクのサイト等で補ない、倍速視聴で時間をセーブする。

この視聴方法が状態となってくると、結果が分からない状態で映画を見始めるのはもはやストレス、先にネタバレサイトなどで犯人を調べるそうな。

こうなるともはや作品鑑賞とは言えない。コンテンツ消費とは言いえて妙だ。

 

同じ倍速視聴でも、鑑賞すべき作品を選択するための倍速視聴の私の場合と根本が違う。

私は、友達と話を合わせるためにではなく、自分自身が感動するために映画などを視聴している。

 

当然、作品を作成する側も、若者の視聴トレンドにあわせて作品を変化させていく。

私が現在視聴しているTVアニメにも、「異世界でチート能力を手に入れた俺は現実世界をも無双する」「異世界ワンターンキル姉さん~姉同伴の異世界生活はじめました」「異世界貴族の冒険譚~自重を知らない神々の使徒」「異世界召喚は二度目です」「勇者が死んだ」、異世界転生ものが5本も含まれている。タイトルがくどく説明的で長いものが多く、内容も似たり寄ったり、作画も粗く、倍速視聴で十分である。

それなら観なければよいのにと思わなくもないが、何となく心地よく面白いので観てしまう。

 

「鬼滅の刃」で竈炭次郎がやたらセリフを発しながら戦う理由も、バラエティ番組でテロップが増えた理由も、根っこは全部一緒、倍速視聴でも意味が理解できるような配慮をしている。

こうなると、エヴァのような難解なものや、ジブリ作品のように登場人物にしっかり演技をさせるものは、もはや敬遠されてしまうということか。

 

この視聴方法が高じて、結果が分からないもの、難解なもの、自分の見たい結末と違うものは見ないということになると、それはもはや進んで自分自身を洗脳することになるのではないだろうか。

G.オーウェルのディストピアの世界?

 

この視聴方法を「怪しからん」と憤ってみたところで意味がない。

要は、受け手にあわせて送り手側も、時代が、世の中全体がそういうふうに変化したということ。

それでも、やはり、自分は、周囲への見栄ではなく自分自身の感動のために作品を鑑賞すること、好きな作品は決して早送りはしないことを改めて決意した次第である。