さすが直木賞受賞作。タイトルの「塞王の盾」とは、その存在自体が抑止力を持つほど絶対的な防御力を誇る石垣を意味する。穴太衆という石垣づくりの特殊技能集団の若き棟梁が「平和のための石垣」武器」がテーマだが、本質的には圧巻の戦国エンターテインメント。
どんな攻めをも、はね返す石垣と、どんな守りをも打ち破る鉄砲の、ワクワクドキドキの対決、560ページの長さも全く気にならなかった。
越前・一乗谷にあった幼き匡介は、織田信長に攻められて父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎に助けられる。匡介は源斎を頭目とする穴太衆の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えていた。両親や妹のような人をこれ以上出したくないと願い、石積みの技を磨き続ける。
時は関ヶ原前夜、匡介は東軍に与する京極高次の居城・大津城の石垣の改修を任される。一方、攻め手の西軍・毛利元康と西国無双と呼ばれる立花宗重は、「至高の矛」たる鉄砲を作って皆に恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になるとする国友衆の頭目・彦九郎に鉄砲作りを依頼した。
匡介は大津城にこもり、矜持と信念をもって彦九郎と対峙する。大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける。
「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極の戦国小説である。
話は変わるが先月金沢に旅行した。
前田家は後藤某なるものを穴太衆として召し抱えたとこの本にあったが、泰平の世になって作られた加賀百万石の石垣は戦国の武骨な野面積みとは全く違い、切り石の布目積み。色彩も豊かにアートしていた。