2021年6月に読んだ本 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

6月は15冊読みました。

昨年の「このミス」翻訳部門の1位と2位、話題の海外ミステリーを2冊。

◆その裁きは死 (アンソニー・ホロヴィッツ)
ダニエル・ホーソーン・シリーズ第二作は一作目同様オーソドックスな犯人あてミステリー。日本のミステリーって、意外とこういうのないですよね。動機を無視してやたらトリックに走る本格系だったり、社会派だったり。

こういう王道ミステリーっていいですよね。著者自らが務めるワトソン役が右往左往する様が自虐的で、楽しめます。
 

◆ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ)
「このミス」2位、「本屋大賞」翻訳部門1位、ミステリーというカテゴリーでは収まらない、すごい小説だった。

両親に見捨てられ、地域住民から差別されて、湿地と共に生きる孤独な少女の成長物語と、近隣の沼地で起きた青年の殺人事件の捜査が交互に展開され、やがて湿地の少女が事件の容疑者として逮捕される。

湿地の自然の中で展開される生命の適者生存、自然淘汰と、その中で育った少女の逞しさと用心深さ、凛とした生き様がすごい。

 

ついでに、長いこと積読になっていた、A・クリスティ―の古典を1冊。

◆アクロイド殺し

クリスティの代表作だけに、初読みながらなんとなく犯人を知っていた。それでもかなり面白かった。当時はアンフェアなミステリーと言う評価もあったようだが、よくできた、色あせないミステリー小説。
 

今年も夏の文庫本フェアが始まりました。新旧の選本から「カドフェス」5冊、「ナツイチ」2冊、「新潮文庫の100冊」1冊。

◆虚実妖怪百物語 序 (京極 夏彦)
20年のカドフェス本完読のラス前の1冊。著者をはじめ妖怪関係者?が実名で登場する小説。

1巻目なのでコメントは差し控えるが、内容は楽屋落ちというか、おふざけが過ぎるというか。レオ☆若葉はモデルが実在するのだろうか。こういう人がホントにいたらかなり面倒くさい。
 

◆コンダクター (神永学)
エンタメ系サスペンス・ミステリーとして、読みやすく、面白く読んだ。終盤複雑に絡んだ相関関係も説明がわかりやすくてすっきり。これにて20年のカドフェス本、すべて読了しました。スッキリ!
 

◆午前0時の忘れもの (赤川 次郎)

数年間積読にしていたのを発掘して読了。25年以上前の作品なんですね。

読み始めはシリアスな泣ける話を想像していたのですが、シンプルな良い話で、昔のファンタジーっ感じ。

◆竜とそばかすの姫 (:細田 守)
映像向きのお話なんでしょう。ミュージカル仕立てなのかな。映画、観ます。


◆鹿の王 1 (上橋 菜穂子)
本屋大賞をとったとき(もう6年も前なんですね)に単行本で読んで以来、文庫本を再読。上橋さんの描く世界は雄大で設定が細かい。第1巻はまだまだ物語の始まり、ダブル主人公のホッサルとヴァンの話が並行して進みます。

 

◆大人は泣かないと思っていた (寺地 はるな)
最近お気に入りの著者の短編連作。古い因習が色濃く残る九州の田舎町に暮らす人々7人がそれぞれの視点で語る群像劇。押し付けられた価値観に抵抗しながら生きようとする若者たち。やさしさが男の強さを地で行く一見なよなよした時田翼くん、「妥当じゃない」で見せた行動力は見事。その友人の鉄也の「君のために生まれてきたわけじゃない」のお節介な友情も良い。鉄也の恋人の玲子さんもかっこいい。私は東京の下町生まれだが、東京の下町にも自分の価値観を押し付ける地元はあるので、共感。
 

◆慈雨(柚月 裕子)
長いこと積読本になっていたが、読み始めたらあっという間だった。

引退した刑事が、後悔を抱えながら妻と遍路旅をする。後悔とは、冤罪の可能性がある幼女誘拐殺人事件を放置してしまったこと。後輩刑事と連絡を取り合い、四国をめぐりながら事件を解決に導く。正義を貫く刑事の静かな覚悟と使命感が、遍路旅と共に結願する。遍路旅の情景や人情と重なって、柚月さんの作品にしては派手さはないが、美しい。

◆ひらいて(綿矢 りさ)
「勝手にふるえてろ」のよしかもだけど、綿矢さんの描く痛いヒロインのぶっとびぶりがすごい。同性愛者でもないのにカラダを使って美雪を誘惑、目的のためには自分を傷つけることなどいとわないそのめちゃくちゃぶり。夜の教室のシーンも、そこまでやりますか。

二人には、本性ごと受け入れてもらえたみたいで。でも、ここまでやって、青春のイニシエーションで済むのかな。

◆自転しながら公転する(山本 文緒)
ヒーローとヒロインには程遠い二人の中途半端に不幸な生い立ちとグダグダの性格、でも、なんか引き込まれる文章と展開で、面白かった。「自転しながら公転する」、タイトルが絶妙です。私も震災の時に行きましたがボランティアの件とかリアル、絵里とそよか、都の友人の取り合わせも良い。ニャンくんの存在がご都合主義で、プロローグとエピローグが浮いているような気もしますが、でも、人生そんなもんかもしれません。幸運は走りながらも考えて努力する人に訪れる。

◆たけくらべ・にごりえ (樋口 一葉)
自宅近くに著者の住居や終焉の地の碑があり、いやいやこれは地元の縁で読まねばなーと思いながら、とっつきにくそうでこの年まで読まずに来てしまった。文語体で句読点の少ない文章に手こずったが、見た目と裏腹に、「たけくらべ」などの内容は当時としてはかなり新しいものだったのだろうなと感じた。


◆小説 心が叫びたがってるんだ。 (豊田 美加,超平和バスターズ)
映画はかなり前に視聴済み、ずっと本だけ積読になっていた。そうそう、超平和バスターズの秩父三部作の二作目、こういうお話でした。映像で曖昧だったところが補完できました。

◆お父さんはユーチューバー(浜口 倫太郎)
「読者メーター」で著者サイン入りの献本をいただいたのに、今日まで積読にしていました。申し訳ない。楽しく読ませていただきました。宮古島の海、いいですなー。