やみくもに、自分本位に、あたりをなぎ倒しながら疾走する、はじめての恋。彼のまなざしが私を静かに支配する――。華やかで高慢な女子高生・愛が、妙な名前のもっさりした男子に恋をした。だが彼には中学時代からの恋人がいて……。傷つけて、傷ついて、事態はとんでもない方向に展開してゆくが、それでも心をひらくことこそ、生きているあかしなのだ。(「BOOK」データベースより)
「勝手にふるえてろ」のよしかもだけど、綿矢さんの描く痛いヒロインのぶっとびぶり、すごいです。
この小説のヒロインの愛さん、同じクラスの冴えない男子、たとえ君のことを好きなのですが、価値基準、行動基準がめちゃくちゃ。そこまで好きなら、手紙を出すなり、コクるなりすればいいと思うのですが、まず夜の学校に忍び込んで、手紙を盗むとは、、、
手紙を読んで、恋人・美雪の存在を知ってもあきらめない。別クラスの彼女に近づいて友達になり、二人の関係を情報収集する一方で、たとえ君と二人になったチャンスに衝動的に告白、でもあっさりフラれてしまう。
プライドが砕け散った愛さん、自分の恋が叶わないなら、二人の仲をぶち壊すまで、ここからの行動がすごい。
同性愛者でもないのに、気持ち悪いのを我慢してカラダを使って美雪を誘惑、目的のためには自分を傷つけることなどいとわない。でも、愛の意外なテクニック?に、その気になってしまった美雪に、愛も、心とは裏腹にその行為にはまっていく。このあたりの描写は、さすが芥川賞作家、そこらのエロ小説とは格調が違って、なんともエロチック。
美雪の部屋での行為の後、彼女のケータイを使ってたとえ君を夜の学校に呼び出し、教室でコトに及ぼうとして、決定的にフラれ、やけになった愛は美雪にも「たとえ君が好きで、二人の仲を壊すために美雪と寝た」と真実を告白、とうとう完全に砕け散ってしまった愛。
でも、美雪とのことは、愛も情が移っ散ってしまっていますよね。
二人には、愛のとんでもない本性ごと許してもらえたみたいで、、、
でも、ここまでやって、もし10年後彼らが会ったら、あれは青春のイニシエーションで済むのかな。
今秋に映画が公開されるみたいですね。
小説そのままを映画にしたら、きっとR-18指定になっちゃいます。でも、性描写をマイルドにしたら、ヒロイン・愛の異常な暴走っぷりが伝わりきらないかも。
ぜひ、そのまま、過激な映画にしていただけることを期待します。