同じロースクールで法律家を志した三人。謎を残して馨は命を失った。美鈴はその殺人の被告人になり、清義は弁護士になって美鈴の弁護を引き受けた。美鈴と清義は同じ養護施設の出身、そして東野圭吾さんの『白夜行』ばりの秘密の過去があった。不平等な世の中を手を取り合って切り抜けてきた、絆で結ばれた二人の闇が暴かれていく。
第一部は「無辜ゲーム」、ロースクール内で行われていた、いかにも法律家の卵たちらしいゲームで、清義が受けた名誉棄損がその題材となる。このゲームの審判者はいつも変わらず馨、既に弁護士資格を取得しているのにこの底辺のロースクールに身を置く変わり種だ。
一方で、美鈴はストーカー被害を受けていた。二人とも泣き寝入りすることなく被害に立ち向かうわけだが、なるほど、この章全体が後に起こる事件の伏線となっている。
第二部の「法廷遊戯」の冒頭で驚愕の事件が起きる。不幸から這い上がるために他人を犠牲にしてきた美鈴と清義、手段は正しくないが、他に方法はなかったのだろう、そのことを単純に非難する気持ちにはなれない。だけど二人が助かるために不幸のどん底に落ちた人がいることもまた事実。この不幸の連鎖に、実はその当事者であった馨は、いかにも法律家の卵らしい方法で立ち向かった、その結果として馨は命を落とす。
前半部分のち密な伏線、大方予想通りに展開する謎解き、そしてラスト20ページ、何かあるのだろうとは思っていたが、想像の上をいく怒涛の展開で、ラストはこれまた東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」のような、ちょっと後味の悪いものだった。
メフィスト賞受賞作、昨年末の「このミス!」「ミステリが読みたい!」「文春ミステリー」「本格ミステリ」すべてに10位までにランクインした作品は、前評判通りの面白さだった。