原作は塩田武士さんの同名小説、16年の文春ミステリー1位、第7回山田風太郎賞、第14回本屋大賞第3位、当時まずまず話題になった作品です。私は図書館本で読んだ後、文庫本になったときに購入して再読しました。
くらま天狗と名乗る犯罪集団が引き起こした誘拐・脅迫事件がテーマなのですが、元ネタはもちろんグリコ森永事件。「どくいりきけん、たべたらしぬで」、世間を騒がせ、警察を振り回した劇場型犯罪でしたが、あれだけ大掛かりなことをしながら、身代金を取ることなく、未解決のまま事件は終息しました。
事件を記憶している人であれば興味を持たずにはいられない小説。これノンフィクションなんじゃないのと思えるくらいリアリティのある、それでいて実によく作り込まれた社会派サスペンス・ミステリーでした。
子供の頃の自分の声が犯罪に使われたと知った曽根俊介(星野源)と、改めて事件を追う新聞記者の阿久津(小栗旬)の二人が、並行して35年前の真実を探っていくのですが、この二人がいつ交差するのかのハラハラ感、そんな昔のこと分かるわけないじゃないと思える取材が細い糸でつなっていく醍醐味が良く再現されていました。
阿久津が再び英国を訪れ、ついに犯人の一人と会うシーン、英国の街並みの映像がきれいで、小栗旬さんと宇崎竜童さんがいい味出してました。
空疎な社会に一石を投じるためにやったと語る曽根達也の身勝手さ、本人の意思とは関係なく犯罪に加担させられ、そのために地面をはいずるような悲惨な人生を送ることになった生島の子供たち。心を揺さぶられた原作が忠実に映像化されていた、良い映画でした。