「営繕かるかや怪異譚その弐」(小野 不由美) 前作よりパワーアップ!家に纏わる怖くて哀しい物語 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

営繕かるかや

 

地方の古い城下町で起こる、家に纏わる怪異譚のあれこれ。背筋にぞわっとくる短編が6編、2冊目は1冊よりもパワーアップした気がする。

 

両親と弟が亡くなった後の、かつて花街だった古い町にある実家に一人住むことになった貴樹は、弟の部屋の書棚の鏡に、三味線を抱えて座るはかなげな着物姿の人影を見た。次第にその女に惹かれていく貴樹、しかしその女は弟を心中に引き込んだ危険なものだった。(「芙蓉忌」)

 

佐代が生まれた街の神社の脇に、夕暮れになると暗くて怖い、「通りゃんせ」の歌のような細道がある。子供の頃、佐代はここで豪華なとても怖い鬼のようなものに肩を掴まれた。それ以来、佐代は「通りゃんせ」の詩が怖くて仕方がない。さて、子供の頃に会ったその鬼の正体は、、、佐代は夫と共に昔の記憶を探る。(「関守」)

 

母が住む田舎の家に、離婚して帰ってきた俊宏とその息子の航。しかし母親は倒れて寝たきりで入院、飼猫の小春が交通事故で死んでしまう。それを息子の航に告げられない俊宏だが、あるとき航が「小春が夜布団に来た」という。布団を調べると僅かな汚れと激い異臭、得体のしれない「何か」が家に迫ってくる。(「まつとし聞かば」)

 

あこがれていた築50年以上の古い民家を借り、暇を見つけては手を加え住んでいる郁。やがて彼女は夜になると責めるような強い語調の女の声を聞き、暗闇に人影が座り込んで何かを責めている夢を見るようになる。その正体は、常識に欠ける郁がやらかしてしまった意外なものだった。(「魂やどりて」)

 

「たぶん僕はもうじき死んでしまうから」と結婚を拒む恋人はの弘也、彼は小五の夏休みに川で幼馴染のリュウちゃんを見殺しにした翌年から、淀んだ水の臭いを嗅ぎ、鏡の中に子供の姿を見ていた。やがて彼の身内が次々と死を遂げる。その原因は、そして鏡の子供の正体はリュウちゃんなのか、、(「水の声」)


両親の不仲から逃れるために押し入れに寝場所を作った小6の樹は、天井に隙間を見つけた。その上には誰かが作った屋根裏部屋があった。自分だけの秘密基地として屋根裏部屋を探検する樹が見たものは、首をつってゆらりと揺れる、片眼、片脚がない血だらけの人影をだった。(「まさくに」)

 

「営繕かるかや」にいきつく経緯はいろいろだが、最後にちょこっと尾端が登場して、鮮やかに問題を解決していく。でも、決して営繕屋さんが主人公なのではない。主人公は怪異や、その怪異を抱えた家そのもの。

怖い話だけど、怖いだけではない。哀しさや、時には優しさに満ちた、不思議な物語。