私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれた―。正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても心はひとつと信じていたのに、思いがけない別れ道が…。
少女から大人に変わる十余年を描く、最強のガール・ミーツ・ガール小説。(「BOOK」データベースより)
不思議なもので、昔読んだ小説で、内容をきれいさっぱり忘れてしまっているものもあれば、結構覚えているものもある。この作品を単行本で読んだのは15年12月、ほぼ3年半前になるが、その割にはしっかり内容が記憶に残っていた。でも、覚えているいないに係わらず、昔読んで面白いと思った小説は、やはり今読んでも面白い。
私にとって、柚月麻子さんの作品は、好き嫌いがはっきり分かれる傾向があって、「アッコちゃん」シリーズとか「BUTTER」はダメだったけど、これと「ナイルパーチの女子会」は好き。
でも、本作と「ナイルパーチ...」は内容的に対局にある小説である。他人の領域に土足で踏み込み、ストーカーと化して相手を翔子を傷つけることになった「ナイルパーチ...」の栄利子。対する本作のダイアナと彩子は、境遇の違いにも係わらず、互いを自然体で評価しあった小学校時代のゆるぎない友情の素地があり、離れ離れになっていても、きっかけさえあれば、分かりあえ、高めあえる関係にある。
中学からは別々の道を歩むことになり、些細な誤解から連絡も取らなくなってしまった二人。母子家庭で母は歌舞伎町のキャバ嬢、柄の悪い公立中学に進んだダイアナと、裕福な家庭に育ちお嬢様学校から有名大学に進学した彩子、しかし人生に躓いたのは彩子の方だった。早稲田大学のスーパーフリー事件を思わせるヤリサーで強姦されてしまった彩子は、その事実を自分で認めることができず、サークルに加入し、その相手と恋人同士になってしまう。大学で無為な4年間を過ごす彩子、一方でダイアナは高校卒業後、書店にアルバイトとして採用されると、やがて認められて契約社員になり、ポップの作成や「ほんのむし」のHNで書評を書くなど、自分のやりたかった道を地道に歩んでいくことになる。
ダイアナの今を知った彩子は、自ら自分を縛っていた戒めを解き、自らの過去に決着をつけて、ダイアナと向き合う。10年の年月を感じさせない、二人の自然な再開に思わず胸が熱くなる。
読書が二人の縁を紡ぐ、爽やかで鮮やかな友情・成長物語である。