昨年末の「このミス」「本格ミステリ」「文春ミステリー」「ミステリが読みたい!」すべてにランクインした本ということで手に取った。「○○の如き△△るもの」というタイトルはミステリーの解説本等でしばしば目にしていたのだが、今日まで何となく手に取っていなくて、このシリーズ初読み。
怪奇幻想作家の刀城言耶(とうじょう・げんや)が主人公のホームズ役、ラブコメ漫才の相方っぽいのだが、担当編集者の祖父江偲(そふえ・しの)が一応ワトソン役。刀城が祖父江をつれて津々浦々に怪談を求めてフィールドワークに出かけては、ホラーめいた事件に出会う、というのがお約束のようである。
本作は、海と断崖に閉ざされた五つの村からなる強羅地方に伝わる、江戸時代から戦後にかけての四つの怪談、「海原の首」「物見の幻」「竹林の魔」「蛇道の怪」から始まり、これだけで100頁を超える。
120頁あたりでようやく本編が始まる。刀城と偲が、刀城の大学の後輩でこの地方の閖揚(ゆりあげ)村出身の大垣秀継の道案内で犢幽(とくゆう)村を訪れ、怪談をモチーフにした不可解な連続殺人事件に遭遇する。第一の殺人事件の被害者は刀城らに先立ってこの地に滞在していた民俗学者。怪談に登場する竹林の中の庵で不審死していたのだが、その死因がなんと怪談の「竹林の魔」のとおりの餓死。他殺か、それとも事故死か?やっと第一の事件が起きたこの時点で既に200頁、なんとも長い序盤である。
そして第二の事件がこの地に伝わる碆霊(はえだま)様の祭りの後に起こる。なんと祭の主催者で、刀城たちがお世話になっている笹目神社の宮司が行方不明になる。その後も第三、第四の怪談に纏わる事件が起きる。
さすが本格ミステリー、四つの事件を振り返って刀城がその時点での謎を整理するのだが、ホラー系、事件系併せて謎の数なんと70個。この謎を、刀城が掟上今日子以上の総当たりの推理で解決するのだが、、、
殺人に至る動機がおどろおどろしいけど弱いようにも思える。それって殺人までしなければならない事?って。ハウダニット、ホワイダニットは分からなくても、消去法でいけばフーダニットが大体見当がついてしまう。でも、これは本格ミステリーなので、そんなことは気にせずに刀城の怒涛の謎解きに身を任せるのが良いのだろう。竹林の庵、物見櫓、洞窟、開かれた密室のトリックはさすがと思わせるものがあった。特に第一の殺人の方法が悲惨ですごいと思った。こんな殺され方は絶対に嫌だ。
「このミス」1位の「それまでの明日」同様、寡作な作家さんの人気シリーズのファン待望の最新作ということで、最初は必要以上にミステリーファンの中での人気が上がってしまったのかなと思っていたが、いや、これはこれで、中々にすごい。ホラーと本格ミステリーの融合、本格ミステリーがあまり好きになれない私も十分に面白いと思えたのは、ホラー部分がよく描けているからなのだろう。
ただし、偲のキャラについては、ちょっとだけ「うざい」と思った。
これは、シリーズ全作読むことになってしまうのかも。。。