このシリーズも24巻、いよいよ「翔ぶがごとく」から「坂の上の雲」へ、日本が大きく躍進する時代に入ってきました。
大久保利通暗殺後の日本の舵取りをしたのは伊藤博文。それにしても明治日本はなんとも危うい隘路を渡り切ったもので、野蛮人から文明国に手の日を返すことに成功した先人たちの知恵と気骨に感心、感謝です。
第一章は、大日本帝国憲法成立秘話。伊藤博文・岩倉具視がコンビが英国押しの大隈重信との政争に勝利し、井上毅をグランドデザイナーにドイツを手本にした憲法を作成する。司馬遼太郎が「この国のかたち」で、「どうもこの国はドイツのものを採用しすぎた」みたいなことを書いていたと思いますが、こと憲法に関しては、この時点での日本の民度を考えれば正解だったのではないでしょうか。でも、それが50年後に日本を破滅させてしまうわけですが、、、
第二章、伊藤博文首相、陸奥宗光外相のコンビが、不平等条約改正の手法を巡って空転を続ける帝国議会に打った対抗策が清国との開戦でした。考えてみれば、この数十年前の日本は、若き日の伊藤首相自身が英国公邸焼き討ちに参加し、行列を横切った英国人を斬り捨ててしまう攘夷の国だったわけで、英国を始め先進国が野蛮人の国の法律で裁かれぬよう治外法権に固執したのも無理からぬこと。でも、罪を犯した不良外国人を裁判にかけられないようでは治安は守れないし、産業革命前の弱小国が関税自主権もないようでは国内産業など育てようもない。徳川幕府の残したこの負の遺産の解消は日本の悲願でした。
中国を虎視眈々と狙うロシアをけん制したい英国との思惑もあって、当初は日本の大陸進出は欧米列強に歓迎されました。日清戦争のおかげで、日本は不平等条約改正に成功したばかりか大きな利益を得ることができました。日本の独立と安全保障の生命線である朝鮮半島と日本海の制海権を手中に収め、巨額の賠償金で財政は一気に潤い、欧米列強からは他のアジアの国とは違う近代国家であると一目置かれ、台湾という新たな領土も得ることができました。
でも、眠れる獅子・清国が実は張り子の虎だったことが暴かれ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアにあっという間に食い荒らされ、日本も同じ土俵でこれら列強と対峙することに。それと、国民が戦勝に熱狂し、ジャーナリズムや世論が戦争も辞さない強気の外交を熱烈に指示する、そういう風潮ができてしまった。これが、後に日本が大きく道を誤る一因になってしまうのですが、、、
最後の第三章は、日清戦争後の朝鮮、清国事情と植民地統治することになった台湾について。
薩英戦争、下関戦争に大敗、狂信的な攘夷論者が戦死したおかげで、薩長はあっさりと攘夷を捨てることができました。維新後、彼らの政府は、欧州に学び、四民平等、信仰の自由、国民皆兵に舵を切り、わずか20年で憲法を整え、国会を開きました。しかしながら、朱子学の強い影響下にあった清国と朝鮮は、未だに攘夷、海禁、士農工商、男尊女卑、江戸時代以前の日本の状態にとどまり続けます。当時の朝鮮は王家の独裁国家、中でも王妃の閔妃は親族を優遇し公金を恣にする。維新を輸出し、共に欧米列強に対峙しようとする日本の要求を門前払いし、親日改革派は残虐な凌遅刑となり、その親兄弟までが処刑されるに至り、日本は圧政の首魁であった王妃・閔妃を殺害する強硬策に出ますが、これはまずかった。日本人が我が国の皇后を殺した、悪魔の仕儀、とんでもない国ということに、そりゃなりますよね。
古くは神功皇后の三韓征伐や豊臣秀吉の朝鮮出兵もありましたが、現在の日韓問題の始まりは実質的にはここからなのでしょう。いやはや根が深い。
台湾は清国から見れば文明の及ばない化外の地、どうぞご勝手にというところだったのでしょう。日本の台湾接収に、当初台湾は、中国系の人も、後に高砂族と呼ばれる原住民も激烈に抵抗します。でも、教師を殺害してもなお台湾人の教育を継続し、インフラも整える日本の統治に、やがて台湾の人たちの意識が変わっていく。
台湾同様、朝鮮にも、日本は教育を施し、インフラを整備しました。でも朱子学の徒にしてみれば、男女共学とか西洋の技術とかは、悪魔の仕儀だったのでしょう。余談ですが、私が中学生の頃、昭和40年代の社会科の教科書には、北朝鮮は進んだ工業国だと書かれていました。左寄りの方が書いた教科書だったのかもしれませんが、それを割り引いても、北朝鮮が最初から工業国足り得たのは、水力発電所など日本が建設したインフラのおかげ。でも、韓国も北朝鮮もそういう事は絶対に認めようとしない。
本質的な部分では決して分かり合えないということを前提に、いかに良い日韓関係を築いていくか、ですよね。
歴史認識については、韓国の人とは面と向かって議論をしない。お互いこの話題に触れない、大人の対応が唯一の正解のように思います。
従軍慰安婦、徴用工、そして自衛隊機への火器管制レーダー照射、特に今の政権になってから、あちらはいろいろと吹っかけてくる。かといってその場しのぎに謝罪をするとさらにエスカレートするので、せめて日本側だけでも冷静に、大人の対応をし続ける事なのでしょう。