女探偵・葉村晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重傷を負い、記憶を失ったミツエの孫ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する。
大人気、タフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。(「BOOK」データベースより)
このシリーズ、大好きです。最新作が出たので、早速手に取りました。
ヒロインで語り部でもある葉村晶は、吉祥寺のミステリ専門書店のアルバイト店員兼本屋の二階の「白熊探偵社」の唯一の調査員。東都総合リサーチの桜井から、石和梅子という老女の尾行という、桜井曰く「簡単な仕事」を下請けするも、喧嘩してアパートの階段から落ちてきた梅子と青沼ミツエの下敷きとなり流血。今回もいきなり不運な展開で、さすが晶さん、期待を裏切らない。
この怪我がきっかけでミツエの経営する古アパートに移り住むことになった晶。ミツエには光貴という息子がいたが、八ヶ月前にブレーキとアクセルを踏み間違えた老人がバス停に突っ込んできて死亡。一緒に事故に巻き込まれて重傷を負い、事故の前後の記憶をなくした孫のヒロトから、自分がなぜその場所に父といたのか調べてほしいと依頼を受ける。ところがその数日後、古アパートは火事になり、晶はなんとか脱出したものの、ミツエとヒロトは焼死してしまう。
交通事故死と失火による焼死、青沼一家を連続して襲った不幸に不審を抱いた晶の、どう考えても割に合わない調査が始まる。お約束のハードワーク、加齢も手伝って疲労困憊ながら、持ち前の腕前で真相を手繰り寄せていく晶に、犯人の魔の手が迫る。老女の下敷き、アパートの二階からの脱出に続き、またも負傷を追いながらも事件を解決、今回も八面六臂の大活躍の晶さんでした。
このシリーズの探偵役である葉村晶さん、危険を予感しながらも、生活苦とお人好しな性格のため、結局は引き受けて不運な目に遭う、その自虐的でシニカルな語り口がなんとも面白く、小説として読んでいて楽しい。また事件の真相も最後まで目が離せず、ミステリーとしても秀作。
前作の「静かな炎天」は昨年の「このミス」ランキングの2位に入賞、この作品も結構いいセンまでいくと思います。