血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった森宮優子、十七歳。だが、彼女はいつも愛されていた。
身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作。(「BOOK」データベースより)
バトンというから、「あと少し、もう少し」みたいな陸上競技ものかと思ったら、全然違った。継母1人に継父2人と聞いて、物語シリーズの羽川翼委員長の家庭のように悲惨な話かと構えてしまったけど、これまた全然違った。
実の母親とは早くに死別、実父のブラジル転勤に、二度目の母はである派手目の梨花さんは帯同を拒否、小4の優子はどちらと暮らすかの選択を迫られる。結局優子は友達との友情を優先して日本に残ることに。優子ちゃん、小学校時代の友情なんて環境が変ればなすすべなく終わってしまうことが分からない。そんなことを小学生に決めさせること自体、無理だよね。
さて、この継母の梨花が二度再婚、その度に優子の名字は変わる。挙句の果てに家を出て音信不通になった梨花、そして高校生の優子と37歳の父親・森宮さんの二人暮らしが始まるのだが、、、
こうしてみると、実の父親と梨花さんが随分と淡白だなと思ってしまうのだけど、後になってそれは違うということが分かる。それぞれの人にその人なりの愛情の注がれ方をして、まっすぐに育った優子さんは幸せだ。
特に森宮さんのキャラが良い。勇気を振り絞って優子に説教をして、自分のお腹が痛くなってしまうあたり、真面目に親に取組む彼の人柄につい微笑んでしまう。
そして第二章、長じて22歳になった優子さんと恋人の早瀬くんとの結婚に反対する森宮さん、優子さんは、結婚の報告を兼ねて他の親たちを訪ね、味方につけるべく画策をする。4人の親の間でつながれた優子さんのバトン、その役割は早瀬さんに引き継がれる。
「妻の連れ子を虐待死」なんて殺伐としたニュースが聞かれる今日この頃、父性愛を刺激される、優しい気持ちにさせられる作品でした。
自分は子育ては終わってしまったのだけと、優子さんみたいな娘なら今からでも欲しい。
ぜひ来年の本屋大賞にノミネートされてほしい、優しくてほっこりとした気分にさせられる作品でした。